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競う生徒会



「1+1はどうやったって2にしかならないのよ!」

 会長がいつものように小さな胸を張ってなにかの本の受け売りを偉そうに語っていた。

 いや、というか……

「会長、それは小学生だって知ってること――」

「選ばれた者同士、切磋琢磨してこそ成長できるのよ!」

「えぇぇぇぇっ!?」

 俺のツッコミをさえぎっての、まさかの名言2連発だった!

 呆然とする俺たち。そしてさらに驚くべきことに、今回、一番最初にその状態から立ち直ったのは、なんとなんとの真冬ちゃんだった!

「会長さん! 見事なコンボです! 2ヒットです!」

 しかも、なんかほめていた。まあ、でも確かに普段はまずやらないことではある。経験値は確実に溜まっただろう。今日の会議が終わる頃にはコンボボーナスとかももらえるかもしれない。
 ……そうか! 思えば、俺たちには経験値を溜める機会というものがほとんどない。これはつまり、少しずつでも、こうやって経験値を溜めていって、最終的には顧問の真儀瑠先生を打倒しようという、ちびっこ会長――桜野くりむのささやかな抵抗なのだろう。
 ……まあ、どう間違っても真儀瑠先生には勝てそうもない俺たちではあるものの、しかし、それでも――!

「グッジョブです、会長! そう! 塵も積もれば山になる! なるんです! 風に吹かれて拡散なんかしないんです!」

「なんか杉崎にまでほめられた!? というか私の名言をかすませるようなことを言わないでよ!」

 いや、会長の名言は毎回毎回、とても名言と称せるほどのものでは……。会長以外の(おそらくは真儀瑠先生も含めた)全員がそう思ったが、しかし優しい俺たちは、それを口にするのはやめておいた。だって、すごくいまさらなことだし……。

 「それにしても」と少しトーンを落として俺は続けた。

「1+1は……って、T○Sのロイ○・アーヴィング否定ですか? いきなり」

「違うよ! ロイド・○ーヴィングを否定する気はまったくないよ!」

 そこに「そうですよ!」と真冬ちゃんまでテンション高く乗ってくる。……ああ、ゲームの話になると真冬ちゃんはテンションの上がり方、ハンパないからなぁ……。

「○イドは1+1は2になるんだ、と言ったんです!」

「じゃあ、ええと、他に二刀流のキャラというと……あ、ジュー○ス否定?」

「ジュ○ダスも否定はしないよ! 彼は確かに罪深そうだけど、だからといってそれを否定する気もないよ!」

「あ、じゃあラタ○スクのロイド・アーヴィ○グ否定ですか。うん、ちょっとクールになりすぎちゃった感ありますもんね。まあ、それでも俺は嫌いじゃないですけど。ロ○ド」

「それも否定はしないよ! ラ○トスクでもロイ○は○イドだよ!」

「ちなみに会長、ロ○ドに共感はできます?」

「……え? それは、見た目しか知らないから……。あ、むしろプ○セアのほうが共感できそうかな」

 なるほど、プレセ○か。確かに彼女の外見は会長と同じくロリではある。しかしプレ○アは――

「実年齢は、28なんだよな。おまけにラタトス○ではとうとう三十路(みそじ)に……」

「杉崎、なにをブツブツと言ってるの?」

「あ、いえ、なんでも。そういえば会長、なんで今日は名言を二つも?」

「ん? それはね。今日の議題が二つあるからだよ!」

「二つ、ですか?」

 珍しいこともあるものだ。普段はむしろ議題にすることがなくて、ただ雑談に興じていることのほうが多いというのに。

「まあ、名言は二つとも、そのうちのひとつにしか当てはまらないけどね!」

「駄目じゃないですか! せめて、ちゃんとそれぞれの議題に名言を残す、くらいの努力はしましょうよ!」

「したよ。努力。」

「嘘だ!」

「杉崎。『ひ○らし』ネタはもう古いよ?」

「なんか、いつぞやの仕返しをされている!?」

 今日の会長は変に手強かった。まるで別フィールドで戦っているような気分だ。ほら、あれ。自分の体重が普段の10倍になる空間とか、そういうスペースで。

 勝てそうにない流れのときには、話題そのものを変えてしまうに限る。俺はなぜか胸を張っている彼女に向かって――

「そうそう、言い忘れてたけど、今日は二次創作に進出よ! 諸君!」

 俺のターンはすっぱり無視されましたとさ。……いや、ただ単にまだ会長のターンだっただけか。しかし、それはそれとして、二次創作?

「二次創作っていうと、あれですか? 登場人物は変わらないけど執筆者が違うという……」

「そう、それ! だから今日は全員、メタな発言OK!」

 その発言に、はて? と一瞬思ったものの、すぐに、ああそうか、と納得する俺。

「OKっていうか、どうしても避けられませんもんね、メタなセリフ。これを執筆しているのは二次創作を書いている人であるはずなのに、実際に執筆して提出するのは俺だという矛盾もありますし。そもそも、そういう意味では、この『生徒会シリーズ』の『原作者』って誰? ということにもなっちゃいますし」

 それに知弦さんも同調してくれる。

「そうね。とりあえず『原作者』のことは『作者』さん、二次創作をやる人のことは『執筆者』とでも呼びましょうか」

 しかし、これからここで行われる会議を文章を起こして『執筆者』に渡すのは俺であるわけで。そして、じゃあ『執筆者』の役割って一体? となるわけだ。ううむ、『生徒会』はみすてりぃ。

「あと、普段の私たちや、私たちのプロフィールがわからないという人には富士見書房から出版されている『生徒会の一存』、『生徒会の二心』、あと『生徒会の三振』を購入してもらいましょうか」

「なんか、以前『作者』さんのところでやった『販促』っぽくなってますね……」

 苦笑する真冬ちゃん。まあ、確かにそんな感じではある。でも、

「『生徒会』のファンの人がやるわけだからね、『生徒会』の二次創作っていうのは。ならやっぱり、他の人にも読んでもらいたい、面白いって言い合いたいっていう気持ちがあるわけだから、だったら他の人に勧めるような形には、自然、なっちゃうんじゃないかな」

 「なるほど」と真冬ちゃんが納得したようにうなずく。それを見てから俺は改めて会長に向いた。

「でも会長。実際、その『執筆者』ってなにをやってくれるんですか? もしかして、今回の会議の内容を変わりに文章に起こしてくれる、とか?」

 それは、でも、正直勘弁願いたい。なんというか、この『生徒会』の日常を記すのは、あくまでも俺でありたいと思うのだ。他の人間にはあまり譲りたくない。あ、でも、これは独占欲とか、そういうのとはまた違って……。

 俺がなぜか悶々としてしまっていると、会長がまたも胸を張って答えた。なんかこの人、今回ずっとこんな感じだな。

「ああ、それはしないって。執筆は杉崎がやって、それを『執筆者』のところにメールで送信。『執筆者』はあくまで、『ルーラーの近況報告』というブログの一スペースを提供するだけだって」

「それってもしかして、いわゆる丸投げってやつじゃありませんか?」

「あ〜、そうかもね。ともかく杉崎、今回も執筆、お願いね!」

「……わかりました」

 渋々の風を装ったものの、実はかなりホッとしていた。そうだよな。『生徒会』は俺が書かずして誰が書く! って感じだよなぁ。そんな感情が顔に出てしまっていたのか、はたまた以心伝心の賜物か、隣の席の深夏がニヤニヤとした顔を向けてきた。しかし、『さて、なにを言ってくるか』と身構えた俺にはなにも言わず、会長に質問を飛ばす。

「でもよ、会長さん。二次創作って、この間やった『マンガ』とどう違うんだ? 『作者』さんがやらないっていうのはマンガだって同じことだろ?」

「うん? そう言われてみればそうね……。知弦、どう思――」

「全然違うよ! お姉ちゃん!」

 知弦さんに向けた会長の言葉をさえぎって、真冬ちゃんが深夏に『マンガ』と『二次創作』の違いを「いい?」とテンション高く説明し始めた。……真冬ちゃん、『二次創作』には詳しそうだもんなぁ……。

「市販の商品としての出版物であるマンガはね! 大抵、『作者』さんの監修が入っているものなんだよ! つまりは『作者』公認! でも『二次創作』には絶対に『作者』さんの手が加わらないの! だから『二次創作』には一人称や他の人の呼び方が違う場合がままあるんだよ! 例えば真冬が自分のことを『私』って言ってたり、お姉ちゃんが杉崎先輩のことを『杉崎』と呼んでいたり!」

「…………。二次創作、恐ろしいな……」

 深夏が身体をブルブルと震わせていた。まあ、そりゃあ真冬ちゃんが自分のことを『私』なんて言うようになったら違和感バリバリだし、普段俺のことを『鍵』と呼んでいる深夏が『杉崎』なんて呼ぶようになったら、俺と深夏はかなり他人行儀な関係になっていることだろう。下手したら生徒会がバラバラになるかもしれない。

「他にもあるわよ。公共出版物と二次創作作品との違い」

 知弦さんがなにやらニヤリと笑みを浮かべていた。思わずごくりと息を呑む俺たち。

「――二次創作は、ダークサイド。あるいはアウトサイド。正確にはグレーゾーン。とにかく、やっているだけで犯罪になるのよ」

『怖えぇーーーーーーーーーーーーーーー!』

 「まあ、確かに犯罪にはなりますね」と、なぜか落ち着いている真冬ちゃんを尻目に、マジで叫ぶ俺と深夏。そして会長はといえば、おそるおそるといった風に知弦さんに話しかけていた。

「ち、知弦ぅ。それ、本当に……?」

「ええ、これは冗談でもなんでもないわよ、アカちゃん。二次創作というのは、やっているだけで犯罪になるの。場合によっては『作者』さんの評判を貶めることにもなるし、それ以上に、やっている時点で『著作権』というものを侵害しているのよ。まあ、前もって出版社に問い合わせて許可をもらうなりしていれば問題はないのだけれど」

 ああ、許可をもらうだなんてこと、やってないだろうな、『執筆者』。趣味で二次創作をやっているような人間がそこまで手間をかけているとは思えない。
 会長が「まさか私たち、とんでもなくマズいことしてるんじゃあ……」と震え始める。顔なんてもう真っ青だ。それをちょっと哀れに思ったのか、真冬ちゃんがフォローに入る。

「大丈夫ですよ、会長さん。確かに犯罪にはなりますけど、本当に軽度の犯罪で済みますから。ほら、誰かを傷つけているわけでもありませんし」

「で、でも真冬ちゃん。犯罪になることには変わりないんでしょう?」

「大丈夫ですよ。まあ、お金が絡んでいたりすると、多少は問題になるかもしれませんが。今回はまったくお金、動かないんでしょう? それに『コミケ』とか、二次創作作品を盛大に売り出すイベントだってあるんです。二次創作作品が著作権法を侵害しているなどという事実は、いまや世界中から黙認されているのですよ」

「いくら黙認されていても、悪いことは悪いことじゃない。生徒会の人間が率先して悪いことなんてしちゃいけない。そうでしょ?」

 ああ、会長お得意の『正論』だ。誰一人傷ついていなくても悪いことは悪い、駄目なことは駄目、みたいな理論。

「でも会長、駄目ということは今回の二次創作進出、中止にするんですか?」

 会長は俺の問いに「う〜ん」と少しだけ考えてから、

「うん。どんなに軽いものでも犯罪は犯したくないからね。お金が動かないから問題ないって真冬ちゃんは言うけど、それは逆に言えば、お金をもらっていないからこそ、まだ契約も成り立っていないとも言えるわけだし」

 つまり、『やっぱり、やめます』と『執筆者』に断りを入れてさえおけば、なんの問題もないというわけだ。まあ、それはいいのだけれど、ちょっと意外だったのは……。

「会長、今回本当に金銭絡んでなかったんですか? 俺はてっきり、すでに契約を完了させて金も受け取っちゃったからこそ、駄目だ駄目だと言っていたのだとばかり……」

「そんなわけないでしょ! 失礼だよ、杉崎! 皆もそう思うよね!?」

 勢いよく振った会長に、しかし全員、少し白い目を返す。以前、メディアミックス案を考えていたときにすっかり金の亡者になっていたのはどこの誰だったか……。

「じゃあ、会長。今回は完全にタダ働きのつもりでいたんですね。でも、またなんで?」

「なんでって、そりゃ、ボランティアだよ、ボランティア。ついでに『生徒会』の宣伝にもなるかな、とも確かに思ったけど、基本はボランティア」

「なるほど、ボランティアですか。それはいい心がけ――」

「やっておいて損はないからね、ボランティア」

「どうしてそう点数稼ぎみたいな方向にいくんですか! 会長の思考は!」

「忙しい合間を縫って、ボランティアにも精を出す会長、すごい! と皆が皆、思うんだよ」

「だからなんでそう『私を褒め称えなさい民衆!』みたいな思考にいくんですか! それに忙しいのは大抵、俺です!」

「まあ、今回は企画倒れになりそうだけどね……」

「なんか、企画倒れになってくれてよかったと思いました……」

 あれ? 会長いま、企画倒れに『なりそう』って言った? まさか会長の中ではまだ二次創作進出の企画、生きていますか?

 と、そこにタイミングを計っていたかのように知弦さんが口を開いた。いや、実際に計っていたのだろうけど。

「あら、やろうと思えばやれるわよ、二次創作進出」

「もしかして知弦さん、今回の企画に割とノリノリですか……?」

「そんなにノリノリなつもりもないけれどね。でも客観的に見て、実現不可能ではないわよってこと。それにほら、私、グレーゾーンとかって言葉の響き、好きだし」

「ああ、確かにそうでしょうね……」

「あと『ハイリスクハイリターン』というのがあるけれど、今回は『ノーリスクハイリターン』が狙えそうだしね。アカちゃんの言うとおり、確かにやって損はなさそうだし」

「『ノーリスクハイリターン』って、ボランティアで、ですか? 具体的にどうやって?」

「そうね。――まず言っておきたいのだけれど、アカちゃん」

「うん? なに? 知弦」

「アカちゃんは犯罪は駄目、悪いことはしちゃいけないって言っているけど、私たちが二次創作に進出しても、絶対に犯罪にはならないのよ?」

「え? そうなのっ!? じゃあやろう! 二次創作進出、すぐにやろう!」

 会長はまだやっていないかのように『やろう』と言っているけれど、実際、この会議は常にレコーダーに録音しながら進めていたりする。もっとも、いまさらそのことに突っ込むことはせずに、深夏は身を知弦さんのほうへと向けた。

「でも知弦さん。本当に犯罪にならねぇのか? 会長さんはそこら辺、相当気にしてたみてぇだが……」

「ええ、本当に問題ないのよ、深夏。私たちはどんなことがあっても、絶対に、100パーセント罪には問われないわ。問われるのは――『執筆者』だけよ」

「本当に『ノーリスクハイリターン』だっ!」

 叫ぶ深夏の声を聞きながら、確かに、と俺は無言でうなずいた。
 『執筆者』のブログにこの会議の内容を載せてもらえば、少人数であっても『生徒会』に興味を持ってくれる人が現れるだろう。しかも俺たちの説明はすっ飛ばしているから、上手くいけばそのあたりが気になって『生徒会の一存』を買ってくれるかもしれない。かなり最初のあたりでそれっぽい宣伝もしてあるからなおさらだ。

 さらに会長の言っていた『ボランティア活動を通しての生徒会のイメージアップ』も狙えるし。……まあ、いままでの会話を全部執筆して作者のブログに載せるのだとしたら、確実にその効果は薄いものになるだろうけれど。

 そして、さらにさらに俺たちにはなにひとつリスクがない。二次創作をやる上での責任問題はすべて『執筆者』のものとなり、俺たちに責任や義務は生じない。極端なことを言ってしまえば、ここで『二次創作進出、やっぱりやめた』とかいう展開になったとしても、『執筆者』にはそれを責めることはできないのだ。金を払って契約しているわけでもなんでもないから。
 まあ、だからといって『やっぱりやめた』などと言うつもりは(いまのところ)ないけれど。

 頭の中を整理して、「じゃあ」と俺は会長に話を振った。

「二次創作をやるのは決定、ということでいいんですよね、会長」

「うん、そうだよ。でも杉崎、そんなに乗り気だったっけ?」

「別に乗り気なわけじゃありませんけどね……」

 やると決まれば、俺だって気合いを入れてちゃんとやる。それは必要最低限の礼儀だと思うからだ。

「あ、そうそう杉崎、今回はあんまりアレな発言しちゃダメだからね。ブログの――『なんとか報告』の品位が下がるから」

「まるでいつかのラジオ放送みたいですね! というか、『ルーラーの近況報告』ですよ! いくらギャラをもらってなくても二次創作を載せてもらうブログの名称くらい憶えておきましょうよ!」

「……そ、そんなことよりも、今日の議題のことなんだけどね」

 あ、話を逸らしやがった。とはいえ、いつまでも脱線しているわけにもいかない。今日は議題が二つもあるというのだから、早く始めないと俺の雑務にも支障をきたすことになりかねない。

「ほら、いつだったか杉崎の代わりにバーッと私が雑務を片づけてあげたことがあったじゃない」

「ああ、『生徒会の三振』の第六話、『働く生徒会』のときのことね、アカちゃん」

「いま、サラリと宣伝しましたね、知弦さん」

「フォローよ、フォロー。――で? アカちゃん」

「うん。それでね。あれからまた雑務に目を通してみたんだけど」

 スカートのポケットからサッと『生徒の声』が書かれているメモ(俺の手書き)を取り出す会長。俺たちがそれにげんなりしたのは言うまでもない。……あれ? 真儀瑠先生はともかくとして、知弦さんも大して表情を変えていない? まあ、嘆息はしているけれど……。
 ともあれ、会長が『生徒の声』を声に出して読み上げる。

「『情報化社会だというのに、家にパソコンがありません。生徒会、なんとかして』」

『…………』

 しばし落ちる沈黙。
 とりあえず、深刻な悩み相談とかではなくてよかった。

 再度の知弦さんの嘆息と同時に、会長がひとつ咳払いをして口を開いた。

「――というわけなのよ」

「いやいやいやいや! それはその家の問題でしょう! それに『なんとかして』って、範囲広すぎ!」

「大丈夫。もう解決策は考えてあるから」

「え、会長が……?」

「ん? あー、……うん!」

「なんですか! いまの沈黙は!」

「うぅ、いいじゃない。解決策はあるんだから」

「それはそうですけど! ……で、その解決策というのは?」

 さて、一体どうしたものかと考えながら会長の返答を待つ。正直言って、この部屋の誰もが会長の答えに期待なんてしていないのだ。それはそれこそ『生徒会の三振』の第六話、『働く生徒会』で実証済みである。
 しかし、会長の口から出た『解決策』は、

「えっと、まず最初に前置きしておきたいんだけどね、この二次創作が載る『なんとか報告』の管理人、自分のホームページを持っていてね、そこで以前、『生徒会』シリーズの人気投票、というのが非公式に行われたんだって」

「はあ、それで?」

 人気投票か。ふと本日2つ目の名言『選ばれた者同士、切磋琢磨してこそ成長できるのよ!』を思い出した。なんでも目立ちたがり屋な会長のこと、そこでも1位を狙っているのだろう。

「その人気投票は『執筆者』のホームページ――つまりはパソコンを使わないと見れないのよ。非公式とはいえ輝かしい生徒会の足跡。人気投票によって選ばれた生徒会メンバーのみを対象にした、よりレベルの高い人気投票。これをこの学園の生徒が見れなくていいわけがないでしょ!」

 俺は人気投票ではなく、『優良枠』で入ってきた人間なのだけれど、それはいまは置いておくとして。

「……ええと、つまり……?」

「つまり! それを見るためと言えば親も喜んでパソコンを買ってくれるはず!」

 無理じゃなかろうかとか、そういうツッコミをする前に。
 正直、まったく脱線せずに解決策を示してみせた会長に俺は思わず感心してしまっていた。自分の知らぬ間に子供が成長していたときの感慨があった、とでもいうか。

 もっとも「これでいいのよねっ」と会長がはしゃぎ気味に知弦さんに向いた瞬間に、そんな感慨は消し飛んでしまったが。

「……って、その案出したの、知弦さんだったんですかっ!?」

「まあね。今日の昼休みにアカちゃんに『なにかいい案ない?』ってせがまれちゃって。我ながらなかなか面白い解決策だとは思うわ」

「『いい解決策』ではないんですね! 無理あることわかって言ったんですね!? というか、面白さを基準にしないでくださいよ!」

「私にとっては、面白いかそうでないかがすべてなのだけれど。実際、その生徒がパソコンを買ってもらえようともらえまいと私には関係ないことだし」

「ぶっちゃけましたね! それも本音を! それとパソコンを買わされることになる親の金銭的な事情というものも考慮に入れましょうよ!」

「所帯じみたこというわね、キー君」

「俺、現在一人暮らしですからね……」

 とりあえず、この相談をしてきた生徒にはいまの解決策と一緒に『ケータイでもパソコンのサイトは見れる』と伝えておこう。パソコン欲しい理由なんて、大抵はネットをやりたいからなのだろうし。まあ、俺の場合はエロゲをやるから、ケータイでは代用できないのだけれど。

「で、会長。もしかしてとは思いますが、もうひとつの議題というのは、もしかして人気投票のことですか?」

「そう! その通りだよ! 杉崎!」

「あー、やっぱりそうなんですか……。順位を発表でもすればいいんでしょうかね」

 「そうだね」とうなずいた会長を――いや、気楽にかまえている俺と会長を見て、「ふははははは!」と顧問の真儀瑠先生が笑った。

「な、なんです? 真儀瑠先生」

「甘いな、杉崎! そして桜野! 人気投票の結果はすでに『執筆者』のホームページ『ルーラーの館』のほうで公開されている! それも3ヶ月以上も前に!」

「ちょ、それってまさか!」

「そう。すなわち! この『競う生徒会』を読んでいる者の大半は人気投票の結果を知っているということになる!」

「ちょっと! それじゃどうやって面白く読んでもらおうっていうんですか! 最後に1位を発表とかしても白けるだけじゃないですか!」

 というか、すごい責任重大じゃないか? この役目。結果がわかっている状態での結果発表を面白く読んでもらおうだなんて、俺たちが面白おかしく結果を発表していくしかないじゃないか。くそぅ! なんて無駄にハードルが高いんだ!

「心配するな。私、真儀瑠紗鳥もまだ目を通していない『結果発表』をプリントアウトした紙がここにある」

 先生は取り出したその紙に目を落とし、

「これを使って、実況中継風に結果を発表していこうではないか!」

「おおっ! そんな方法が! 今回ばかりは素直に言っておきます。――さすが真儀瑠先生!」

「そう褒めるな、杉崎。これは以前、『スレイヤーズ』第一回キャラクター人気投票の結果発表で使われた方法だ。詳しくは富士見書房から刊行されている『スレイヤーズすぺしゃるA リトル・プリンセス』のあとがきを参照」

「なんか褒めてすごい損した!」

「では始めるぞ! 人気投票の参加メンバーは桜野 くりむ、杉崎 鍵、椎名 深夏、椎名 真冬、紅葉 知弦、藤堂 リリシア、杉崎 林檎、松原 飛鳥の8名だ!」

「飛鳥や林檎まで参戦しているんですか!? あれ、でも真儀瑠先生は――」

「状況を公平な立場で見れる人間が必要だろう? こういうときには」

「まあ、それはその通りですけど」

「まあ、実のところ、私は『二心』の刊行と同時に人気投票に参戦したからな。人気投票を開始した段階では、私にはまだ投票不可だったんだ。隠しキャラみたいな感じか」

「隠しキャラだというのなら、早々にバラしちゃ駄目だと思います!」

「いいじゃないか。この記事を読んでいる者たちはすでに知ってることだ」

「いや、確かにその通りなんでしょうけど! でもだからって――」

「では実況中継風結果発表を始めるぞ!」

「俺のツッコミ、思いっきり無視された!」

 俺の嘆きすらも無視して、真儀瑠先生が紙に目を通し、実況中継風結果発表とやらをスタートさせる。

「まず人気が集まったのは、椎名(姉)に1票! 桜野に1票! 紅葉に3票! そして、おっと、これは意外! 杉崎だ! 杉崎に5票! 5票も入った!」

「本当に意外な展開だ! というか本当になんで杉崎がトップに!?」

「鍵がいきなりトップって、おかしくねえか!?」

「……まあ、すぐに巻き返せるわよ、ええ」

「真冬は!? 真冬はどうなったのですか!? そんなに真冬は人気がないのですか!?」

 真儀瑠先生の実況中継風結果発表が始まったと同時、俄然沸き立つ俺のハーレムメンバーたち。その中でも会長と深夏がかなり失礼なことを言っていたが、俺もそれにはまったく同感だったので、特に文句を言うことはしなかった。……いや、だって、俺がトップって、なあ……。

 俺たちの動揺など気にも留めず、先生は実況を続ける。

「更に杉崎! 杉崎! またも杉崎! この段階で杉崎、合計8票! しかし紅葉も負けてはいない! 票数を4、獲得して杉崎を捉える!」

 知弦さんが無言でグッと拳を握った。この人もなんだかんだで熱くなってるな……。

「真冬は!? 真冬はどうなっているのですか!?」

「椎名(妹)にはまだ1票も入っていない! これは得票数0、確定か!?」

「えぇっ!? 真冬のファンはいないのですか!? 腐女子は人気の出ないキャラなのですか!? 真冬は人気投票でも要らない子なのですか!?」

 ……うん。とりあえず『腐女子』というキャラクターで人気を得るのは難しいと思うよ、真冬ちゃん。

「おおっと! ここで椎名(姉)! 椎名(姉)に票が入った! そして椎名(姉)を逃がすまいと桜野にも票が入る! しかし得票数は1! 桜野、椎名(姉)を追い抜くことは敵わない! 桜野と椎名(姉)、2票ずつで並んだ!」

「ほら、やっぱり1+1はどうやったって2にしかならないのよ……」

 悔しそうに、あるいはどこかふてくされたように会長が呟いた。実は俺は、会長は『1+1は3にも4にもなる』という考えの持ち主だろうと思っていたので、正直、冒頭から怪訝には思っていたのだが、……なるほど、そういうことだったのか。
 ひとり納得する俺をよそに、真儀瑠先生の段々とヒートアップし始めている実況が続く。……この先生、根はかなり熱そうだもんなぁ。普段はかなり冷めたこと言ってるけど。

「さあ、一方で杉崎にも1票入った! 負けじと紅葉にも票が入る! 表数は2! ここで紅葉、ついに杉崎に並んだあぁぁぁぁっ!!」

「…………。なんか私と深夏、かなり底辺で競っているわね……」

「……ああ。でも会長さん、あたしはまだマシだと思うことにするぜ。あたしの妹なんて、真冬なんて……!」

 ず〜んと落ち込んでしまっている真冬ちゃんを横目で見て、目元に光るものを浮かべる深夏。ああ、この二人仲いいからなぁ。この人気投票で二人の間に亀裂が入ったりしなければいいんだが……。

「…………。むう、ここからしばらくは誰にも票が入らない期間が続くな。あらかた投票し終えてしまった、といったところか。あるいはこの企画自体に飽きられてしまったか……?」

「俺と知弦さん、会長と深夏の二組が並んだ状態で、ですか!? 駄目じゃないですか! 人気投票、実は企画倒れで終わってたんじゃないんですか!?」

「…………。真冬には1票も入らずに終わってしまったのですか……」

 真冬ちゃんの落ち込み振りが尋常じゃなかった。

「心配するな。そろそろ……よし、動き出した。まず椎名(妹)に1票入ったな」

「――だって。よかったね、お姉ちゃ――って、ええ!? 真冬にですか!? 本当ですか!?」

「本当だとも! そして……おおっ! 桜野! 桜野! 桜野! 桜野に票が集中している! その数、なんと7票! 一気に杉崎と紅葉に並んだあぁぁぁぁっ!」

「ほ、本当!? やったぁ!」

 てっきり「ま、当然の結果ね!」と胸を張るかと思っていたが、会長はなんとも素直にバンザイした。どうやら相当嬉しかったらしい。……しかし、俺は一抹なんてものじゃ足りないくらいの胡散臭さを感じて、先生の実況中継を中断させた。

「真儀瑠先生。それって本当に人気投票の正しい結果なんですか? なんかさっきから不自然に盛り上がっている気がするんですけど。まさかとは思いますが、改ざんとかしていません?」

「なにを言うか、杉崎。当然――しているに決まっているだろう!」

「威張らないでくださいっ! それよりどうするんですか! 票の改ざんなんかして――」

「ああ、票数の改ざんはしていないぞ。票の入ったタイミングをいじっているだけだ。当然、順位の変動も起こらない」

「…………」

 なんというか、その……。……この先生は、まったく……!

 思わず身もだえする俺に真儀瑠先生がニヤニヤとしながら声をかけてきた。

「どうした? 杉崎? このほうが盛り上がるんだ。この企画の性質上、盛り上がるほうがいいだろう?」

「そうですけど……」

「それに、この発表の仕方をしても問題は一切ないだろう?」

「ないですけど!」

「では、続けるぞー」

「いいですけど! いいですけどね!」

「では、後半戦、スタート!」

「後半戦!? どういう基準で前半と後半の線を引いてるんですか!?」

「『生徒会の二心』の発売前と発売後、という基準で、だな」

「ああっ! 突っ込んだだけなのにまともな返答された!」

「さあ、後半戦に入り、ついに私、真儀瑠紗鳥も人気投票に参戦!」

「俺の発言は完全無視の方向なんですね!」

「参戦と同時にいきなり2票! さすがは私! さすがは『強くてニューゲーム』キャラ!」

 本当に俺の発言は完全無視の方向でいくらしい。仕方ないのですごすごと引き下がる。……くすん。
 代わりに大声を上げたのは椎名姉妹だった。

「もう真冬が追い越されました!」

「あたしにも早々に並ばれたぞ!」

「『二心』で人気が出たのか、椎名(妹)にも1票! 私と椎名(姉)に即座に追いついてきた!」

 むう。これで深夏、真冬ちゃん、真儀瑠先生が各2票ずつで並んだか。というか、俺、会長、知弦さんの上位組のほうはどうなったんだ?

「ぬっ! これは……!」

 どうやら動きがあったらしい。会長が俺を睨みつけてくる。……いや、そんなことをしても結果は変わりませんよ、会長。知弦さんも知弦さんで、俺に不敵な笑みを向けてくるし。

「紅葉! 紅葉! 紅葉! 紅葉あぁぁぁぁっ! 紅葉に票が集まり始めたあぁぁぁぁっ! 得票数は現段階で15! 杉崎と桜野に6票もの差をつけたあぁぁぁぁっ!」

「そんなあっ!」

「しかし、桜野も負けてはいない! 票数は1だが、着実に票を得ている! 杉崎を追い越し、紅葉と5票差で2位に躍り出た!」

「よしっ!」

 真儀瑠先生の実況に一喜一憂する会長。ちなみに俺は無言のまま。知弦さんもまた、不敵な笑みを浮かべたまま。俺も知弦さんもわかっているのだ。なにしろ票の入り方を組み立てているのが真儀瑠先生なのである、どうせ最後のほうに大どんでん返しを狙っているに違いない。ならここで一喜一憂していても仕方ないのだ。下手をすると最後のほうで深夏や真冬ちゃん、場合によっては真儀瑠先生が十数票を一気に獲得して1位、なんて可能性もあるのだから。

「さあ、不本意ながらも地味に私に1票が投じられた! そして――杉崎! 杉崎が桜野はもちろんのこと、紅葉をも抜いたっ! 得票数は19! なんと一気に10もの票が杉崎に集まったという計算にっ!」 

『10票も!?』

 先生に踊らされているとわかってはいるのだが、ついつい反応してしまった俺と知弦さん。正直、俺にここまで票が入るとは思っていなかったのだ。俺自身がそうなのだから、知弦さんの驚愕の表情といったら、もう。

「しかし紅葉とて負けてはいない! 5票! 5票が入った! ぶっちゃけ本当はもっと小刻みに票が入ったことにしたかったが、あまり長々とやっているとグダグダになる上、なによりいい加減飽きてきたので、紅葉にも一気に票が5、入ったあぁぁぁぁっ!」

「そんなことをぶっちゃけないでください! 真儀瑠先生!」

 この分だと、俺に一気に票が10も入ったのも、『飽きてきたから』なのだろう。

「さて、キー君。これで私は20票、キー君は19票。――どうやら、このまま私とキー君との一騎打ち、ということになりそうね」

「いえ、それはわかりませんよ。最後の最後で会長が票を得て、三つ巴の争いになる可能性も高いです」

「そうだよ! なんてったって私は会長なんだから!」

 静かに火花を散らす俺と知弦さんに、テンション高く告げてくる会長。さあ、知弦さんは逃げ切ることが出来るのか? そして俺と会長はどこまで追える?

「杉崎に票が入る! その数、2!」

 ――逆転!

 狙った感満載ではあったが、それでも俺は会心の笑みを浮かべて拳を握り、知弦さんは悔しそうに唇を噛み、そして会長は地団太を踏んでいた。もう3人が3人とも真儀瑠先生の掌で踊らされている。しかし、いい塩梅にテンションの上がった俺たちには、そんなことはどうでもよくなっていた。
 ちなみに、椎名姉妹は揃って仲良く得票数2。完全に傍観の姿勢に入っている。

 真儀瑠先生が実況を続ける。票数から見ても、そろそろ終了が近いだろう。

「追う紅葉! 杉崎と並ぶ! しかし杉崎もまた離す! しかしそれでも紅葉人気は衰えない! またも票が入り、各22票ずつで並んだ!」

 意外や意外。俺と知弦さんのデッドヒートが繰り広げられていた。開始当初は誰一人、こんな展開は想像していなかっただろう。

「並んだまま、しばし膠着状態が続く! …………。先に、先に票の動きがあったのは紅葉! 紅葉に1票が投じられた!」

 くっ! このまま逃げられるか――!?

「さあ、そうして――おおっと! ここで椎名(妹)! 椎名(妹)! 椎名(妹)! 椎名(妹)がきたあぁぁぁぁっ!!」

 ――やっぱりそうきたか! しかし、まさか真冬ちゃんとは!
 どこかぼんやりしていた真冬ちゃんの目に力が入った!

「何票ですか! 真冬に何票入ったのですか!?」

 真儀瑠先生が真冬ちゃんの問いかけに、もったいぶるようにしばし沈黙した。それから軽く息を吸い、大声で告げる。

「椎名(妹)、ここでついに1票を獲得ぅぅぅぅっ!!」

『1票だけ!?』

 真儀瑠先生を除いた全員の声が重なった。それから真冬ちゃんが涙目で叫ぶ。

「先生! 1票しか入ってないのなら、何度も真冬の名前を呼ぶなんて、そんな無駄に期待させるようなことしないでくださいっ!」

「そう言うな、椎名(妹)よ! これで私と並んだんだぞ!」

「それはそうですけど!」

「それよりも、紅葉に1票だ。この段階で人気投票は締め切られたようだな」

「…………。え?」

 なんか、重要なことをサラッと言われたような気がして、思わず間抜けな声を出してしまう俺。……えっと、あれ……? 締め切られ……?

「……って! そんな盛り上がりに欠ける終わらせ方しないでくださいよ!」

「そうは言われても、これ以上は盛り上がるまい。さあ、順位の発表だ。1位は紅葉、2位がわずか2票差で杉崎、3位が大きく離されて桜野。4位はこれまた大きく離されて、私と椎名(妹)の2人。そして6位が椎名(姉)、と。…………って、なにいぃぃぃぃっ!? 『強くてニューゲーム』キャラである私がベスト3にすら入れなかっただとおぉぉぉぉっ!?」

「いまさら気がついたんですかっ!?」

「……いや、最初から知ってはいたがな。やはりここは礼儀として悔しがっておかなければ、と」

「…………」

 この人、自分の順位が低いのを知っていてもなお、あんなにテンション高く実況中継できていたのか……。真儀瑠先生、相変わらず色々な意味ですごい人だった。

「しっかし、あたしは票が入った人間の中ではビリ、か……」

 「『生徒会の三振』ではかなり活躍したのになぁ……」と嘆く深夏。まあ、確かに彼女にとってタイミングが悪かった、というのはあるかもしれない。

「実際、『三振』が刊行されたいまの段階では、俺が深夏に抜かれててもおかしくなさそうだもんなぁ……」

 苦笑混じりに、しかし本音でそう言う。今回、票の入らなかったリリシアさんも『三振』が刊行されたいまなら、何票か入りそうだし、飛鳥や林檎にしたって、9月刊行予定の『生徒会の日常 碧陽学園生徒会黙示録1』を読んだあとなら票が入った可能性があるだろう。つまりは、結局。

「人気投票の結果って、そこまで気にする必要、ない気がしません?」

 それに知弦さんが同意してくれる。

「そうね。今回私が1位をとれたのは、おそらく『二心』で私が活躍した場面が多かったからなのでしょうし。要するに人気投票の結果というのはその人間のいいところを多く見せられたかどうかによって決まるものなのよね」

 「そうですよね」と真冬ちゃんも会話に加わってきた。

「『三振』が出たいまとなっては、お姉ちゃんと杉崎先輩の人気のほうが高くなってるでしょうし。それに真冬のことだって、もっと深く理解してもらえているはず……」

 俺の人気のほうはともかく、おおむねその通りだと思った。この生徒会の人間たちは、それぞれが最高の魅力を持っているんだ。別に、だからって『人気投票をやる意味なんてない』とまでは言わないけれど、それでも、俺たちが『人気投票』の存在を知って、無理に自分の魅力をアピールする必要は、きっと、ないと思う。

「陳腐な言葉になっちゃいますけど、誰が一番かなんて、この空間ではどうでもいいことなんでしょうね。少なくとも、俺のハーレムメンバーは全員が全員、俺にとって一番なんですから」

「鍵、突っ込みにくい空気のときにそういうことを言うなよ……」

「そう言われても、本音だし」

「…………。はぁ。ハーレムどうこう言わなけりゃ、けっこういい言葉だったっていうのに……」

 深夏がなんか、感心と呆れが入り混じった表情で俺を見ていた。……う〜ん、評価が上がったのか下がったのか、微妙なところだな……。

「――うん。そうね」

 ――と、会長がひとり、なにか納得していた。……はて?

「皆のいいところが全部わかってからじゃないと、勝負はフェアじゃないものね! よし! 今回の人気投票は……えっと、前哨戦? 今年の終わり、私と知弦がこの生徒会を去るときに、本当の人気投票をやるわよ! もちろん今度は誰かのホームページ上じゃなくて、碧陽学園の全生徒に投票してもらう形で!」

 …………。そうか、そういうことになるのか……。

 まあ、この会長のことだから、一ヶ月もすればそういう提案をしたことすら忘れるのだろうけど。

 それがわかっていても、心の中で「やれやれ」とつぶやきながら、俺たちはついつい嘆息してしまうのだった。もちろん、やけに張り切っている会長には見えないように。



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