たおやかな狂える手に



○???サイド

 シルフィードが式見蛍たちに干渉を始めた。それも、恐ろしくひねくれた方法で。

 『彼女』への働きかけでは失敗したが、このまま続ければ、確実に彼女は決定的な事件を引き起こすだろう。
 そして、それを性急に望むのなら、その事件はシルフィードが抱えている『問題』から彼女を開放することにも繋がるだろう。

 そう。彼女が性急な『解決』を望むのならば。

 もちろん、『問題』が解決するとはいっても、それが必ずしも彼女の『救い』になるとは限らない。むしろ、現段階では――性急に動けば動くほど、それが『救い』になる確率は低くなる。

 すべては、式見蛍の選択にかかっているといえるだろう。そして、シルフィードにとっての『最良の選択』は、彼にはできない。彼はまだ、それを選ぼうと思えるようになるほどの情報を得ていない。
 彼女の抱える『問題』を式見蛍が理解できれば、あるいは変わってくるのかもしれないが、おそらくそれは無理だろう。彼女は現在、式見蛍による『最良の選択』を求める以上に、彼女自身の抱える『問題』の一刻も早い解決を望んでいるのだから。

 ゆえに。
 彼女が止まることはできない。


 ――性急にことを進めては『最良の選択』は得られない。


 たとえ彼女がそのことを理解できていたとしても、だ。

 もし、止まることがあるとすれば。

「彼女が臆病風に吹かれた場合のみ、か」

 まあ、どちらであってもかまわない。私の望みは、彼女の求めるものとはかけ離れたところにあるのだから。

 しかし、それでも。
 すべては、『能力保持者』である彼の選択と、行動の先にある。

 私の悲願の成就も。

 彼女の抱えている『問題』――『生きたがりのジレンマ』とでも呼ぶべきものの、最良の形での解決も。

 文字通り、『すべて』が――。


○マルツ・デラードサイド

 昼休み、と呼ばれる時間。
 僕たち――僕、ニーナさん、師匠、リルの四人は、ニーナさんの提案した『ケイくんと鈴音さん、カップル大作戦! IN現守高校!!』を実行に移そうと、ケイと鈴音さんの教室付近で様子をうかがっていた。

 しかし、まさか本当に『カップル大作戦』をやることになるとは思わなかった。だって、あれはニーナさんがここに来るためにその場の勢いで口にしたものだと思っていたし、それ以上にリルが屋上という場所から落ちそうになったうえ、ほんの少しの間とはいっても意識を失っていたんだ。当然、彼女が目を覚ましたらすぐに帰路に着くものだと思うだろう。うん、僕のその思考は実に正常だといえるはず。

 ところが、だ。『カップル大作戦』のことをニーナさんが言いだすと、師匠もリルもすっかり乗り気になってしまった。本当、これは予想外。まさか師匠とリル、どちらも反対しないとは思わなかった。師匠はもっとこう、常識的に考えて、もう少しリルの体調を心配すると考えていたのだけれど。というか、リルもリルだ。確かに身体のほうは問題ないようだけれど、それでも、もう少しで死ぬところだったんだぞ。それを怖いと思わないのか?

 ……思っていない気がする。いや、それどころか彼女は、自分が死にかけたことなんて微塵も気にしていないんじゃないか? 少なくとも、僕にはそうみえる。だとすると、リルも大概非常識だ。……あ、もしかして、このメンバーの中で一番の常識人って、僕だったりしますか?

 ちなみに、リルからアンデッドを引き剥がしてくれたらしい金髪の少女は、『歪み』を追いかけるとかなんとか言って、この建物――というか、敷地内から走って出て行った。なんというか、ご苦労なことだ。またやってきたら撃退すればいいというだけの話なのだし、わざわざ追いかけての始末なんて、しなくてもいいと思うけど。

 それよりも『カップル大作戦』だ。ともかく、作戦の内容に関しては、ついさっきまでニーナさんが色々と無茶な提案してきていた。その提案というのは大体こんな感じだ。や、正直言って、もうあまり思いだしたくはないのだけれどね。

「重要なのは使う呪文をどれにするか、だよね。それによってシチュエーションも変えなきゃいけなくなっちゃうもん」

「はあ、まあ、そうですね……」

「核炎球(コア・ブレイク)とかはどうかな!」

「自信満々に言ってる手前、悪いとは思いますが、ダメだと思います。この建物、下手したら崩壊しちゃいますよ」

「ん〜、じゃあ格段に威力を落として、爆炎乱舞(クラッカー・ボム)。これなら大丈夫でしょ」

「そもそも、どうして爆発を起こす必要があるんですか……」

「二人に危機的状況を作ってあげるんだよ! 吊り橋効果ってやつ!」

「やめましょうよ、そういうことは! もっと穏やかにやりましょうよ! 爆発とかはなし!」

「じゃあ、赤紅霧炎(ブラッド・ガス)!」

「その呪文で発生した霧を吸い込んだ生き物って確か、軽く済んでも一時的に身体が麻痺しますよねぇ! 最悪の場合は呼吸困難で死んじゃいますし!」

「吸い込ませないようにケイくんが廊下に押し倒したりとかすればいいんだよ! いい雰囲気になるって!」

「片想い中なのは鈴音さんのほうでしょう!?」

「あ、そっか。じゃあ、鈴音さんがケイくんを押し倒せばいいんだね」

「いえいえいえいえ! それはなんかやらせちゃいけないと思います!」

「むぅ……。じゃあ、風精雷撃球(エレクトリック・スパーク)でケイくんを痺れさせて、ああ、鈴音の魅力に痺れちゃったよ、と――」

「あ、確かに、ちょっと痺れるだけだから威力的には問題ないですね。……とか言うと思ったら大間違いですよ!」

「え、ダメ? これもダメなのかぁ……。それならモンスターとか召喚して――」

「襲わせるんですか!? それも却下です! というか、吊り橋効果に頼ってばかりじゃないですか! 愛の成分が限りなく薄くないですか、その方法!」

「……う、一理ある。じゃあ、こういうのはどうかな? 精神意操(マリオネット)で鈴音さんを操って告白を――」

「愛がなさすぎるっ!」

「…………。そもそも、言葉で伝えることばかり考えてるからダメなんだよね」

「や、言葉で伝えようなんて、ほとんどしていなかったじゃないですか! 吊り橋効果に頼ってばかりだったじゃないですか!」

「精神意操(マリオネット)は吊り橋効果じゃないと思うけど?」

「わかってますよ! でもそれは絶対にやっちゃいけないことだと思います! ……というかニーナさん、使えるんですか? 精神意操(マリオネット)」

「もちろん。だって仮にも『界王の端末』だし」

「…………」

「ん? なに頭抱えてうずくまってるの? マルツくん。……なんか、震えてる?」

「……いえ、なんでも」

「あ、いっそのこと、鈴音さんに催眠呪法(スリープ・フィール)をかけて、ケイくんと二人きりでどこか適当な部屋に閉じ込めてみようか? ケイくんだって健全な男子だもんね。うん、きっと間違いを犯してくれるよ」

「それ、犯罪じゃありません!?」

「ケイくんに催眠呪法(スリープ・フィール)をかけるのでも可」

「可じゃないですよ! そもそも、それでどうして上手くいくと思っているのかがわからない!」

「とりあえず、二人きりという状況を作り出すのは有効だと思うんだよ」

「……え? まあ、それはそうですね……」

「というわけで! 鉄血回廊(ハピネス・レギオン)で二人を狭い密室こと牢獄に閉じ込め――」

「てどうするんですか! そもそも、その術はデスマッチ用で、どちらかが死なないと出て来れないんじゃありませんでしたっけ!?」

「サーラさんにケイくんを刺してもらって、鈴音さんがそれを優しく看護、というのもありだよね! ねえ、サーラさん。確かナイフ持っ――」

「やらせませんよっ! やらせてたまりますかっ! 師匠もナイフ取り出さない!」

「じゃあ、ケイくんを鈴音さんの前に放り出して、偽欺真実鏡(ライズアンドトゥルー)使って質問しよう! 『あなたが好きなのは誰ですか?』って! あ、もちろんケイくんが動けないよう、呪縛縄(ルーン・ロープ)で縛り上げて!」

「『鈴音』って答えるとは限らないじゃないですか! リスクが高すぎますよ!」

「鈴音さんに使うのも可!」

「だから可じゃありませんって! それに、それはマズすぎますよ、ビジュアル的に!」

「気持ちは風をまとわせた拳と拳で語り合わせよう! 風封拳(エア・ナックル)!」

「二人共に術をかけるんですか!? や、気持ち、絶対に伝わりませんって!」

「精霊や使い魔を呼び出して、鈴音さん手書きのラブレターを運んでもらおう!」

「どうやって書いてもらうかが問題になりますけどねぇ!」

「そこはほら、ボクやサーラさんがそれっぽい文章を、ね?」

「それやったら、『鈴音さん手書きのラブレター』じゃなくなると思います!」

「風静振動陣(サイレンス・フィールド)が効いている空間内で、鈴音さんにジェスチャーやらせよう! 『あなたが好きです』と――」

「やらないと思います! 大体、それで伝わってたまりますかっ!」

「マルツくん、ダメ出ししてばかりだね……。もういっそ、サーラさんに伝えてもらう? 通心波(テレパシー)で鈴音さんの心の中を読んだら、ケイくんのことしか頭にないみたいだったよ、みたいな流れで」

「身も蓋もないっ!」

 ……ああ、思い出すんじゃなかった。本当にろくな提案がありゃしない。
 最終的には師匠の考えた案に落ち着いたのだけれど、よくよく考えてみると、あれはあれでどうだろう。とりあえず、ニーナさんの物騒な案よりかはマシだろうと、ついうなずいちゃったけど……。

 どこからともなく『キーン、コーン。カーン、コーン』という音が響くと同時に、教室の中で動きが生じた。やや時間が経ってから、ケイとユウと鈴音さんの三人も教室から出てくる。
 さっそく作戦を実行に移そう、とニーナさんがこちらに目を向けてきたが、いまはまだダメだ。ケイの隣にユウがいる。師匠の作戦はケイと鈴音さんが二人きりでいるときにやらなければ効果がない。……いや、なくはないのかもしれないけど、限りなく効果が薄くなるはずだ。
 とりあえず、師匠の案を実行できる段階になるまで、タイミングを見計らうことに徹し、ケイたちの背後をこそこそと尾けていく僕たち四人。

 ……う〜ん、ダメだ。ケイと鈴音さんが二人きりになる瞬間が自然にやってくるとは、とても思えない。ここはユウに話しかけて、一旦別行動をとらせるとかしたほうがいいか?

「お〜い、ユウ〜」

 すたすたすたと早歩きでユウに近づき、

「…………」

 ……うん、一体なにを話せばいいんだろう。

「……マルツ? どうしたの?」

 訝しげな表情を浮かべる幽霊の同居人。それを見るともなしに見ながら僕は素早く頭を回転させる。僕がいまやるべきことはユウをケイと鈴音さんのそばから離すこと。だったら……うん、よし。

「ユウ、ちょっと二人きりで話たいことがあるからさ、屋上行かない? 屋上」

「なんで!? なんでなんの脈絡もなく、二人きりで、とかマルツに誘われてるの、私!? というか朝一番にあんなことがあったばかりの場所に一緒に行こうだなんて、すごく危険な誘いに思えてならないよ!」

「う、それは確かに……」

 ちょっと思考が足りなかったか。なら、逆転の発想で。

「じゃあ、ユウはちょっとここで待っていてくれないか? ちょっとケイと鈴音さんと一緒に屋上に行ってきたいからさ」

「ケイと鈴音さんになにする気!? ねえ、なにする気なの、マルツ!?」

「う〜んと、それはちょっとユウには言えない、かな……」

「なに!? 私には言えないようなことをしようとしているの!? というか、屋上に一緒に行く相手は変更可能だったの!?」

 あ〜、マズい。僕たちがユウに言えないことをしようと企んでいるのは事実だからなぁ。いっそ、作戦内容を話して彼女にも協力してもらうか?
 ……いや、ダメだ。僕の第六感が『知られたが最後、ユウは作戦をぶち壊そうとする』と告げている。……しかし、僕には未来予知のような第六感が備わっていたのか、初めて知ったよ。僕は『人間の第六感』って、てっきり『魔力の流れを感じる』あたりだと思っていたから……。

 いやまあ、それはともかく。

「ところでユウたちはいま、どこに向かっているの?」

「無視された! 私の全力ツッコミが無視された!」

 とりあえず話題を逸らすことを選択した僕にユウが大声で嘆いていた。相変わらず元気な幽霊だ。元気ついでにちょっとケイたちから離れてもらえると助かるんだけどなぁ。具体的には彼らからユウの姿が見えなくなるくらいのところまで。

「とりあえず、ちょっと移動しない?」

「してるよ! いま、まさにケイたちと購買に向かっているよ!」

「購買?」

 聞き慣れない単語を口にするユウ。オウム返しに尋ね返すと彼女は嬉々として、

「あ、購買っていうのはね――」

「いや、その説明はあとでいいや。とりあえずケイたちとは逆方向に行こう。ほら、早く」

 まだケイの物質化範囲内にいる彼女の腕をぐいっと引っ張る。

「私にターン回す気ないね、マルツ!」

 無視。それによくよく考えてみればユウにターンを回すのは危険でしかない。下手すると『ずっと私のターン!』とかいう展開になりそうだ。

「ちょ、ちょっと、マルツ! どうして私を購買に行かせまいとするの! 私は甘〜いパンが食べたいんだよ!」

 どうやら『購買』というのはパンを売っているところらしい。しかしいまはそんな情報どうでもよかった。

「別に購買に行くのを邪魔する気はないよ。ただ、ケイたちと一緒に行く必要はないんじゃないかな、と思っただけで」

「必要あるよ! お金出すのはケイだもん!」

 ……言われてみればそうだ。盲点。
 と、ここでユウを引きずっていた僕の手は振り解かれてしまった。いや、違う。ただ単にケイの物質化範囲から出てしまい、僕がユウに触れなくなってしまっただけだ。当然、これ以上ケイたちから力ずくで離すことも不可能ということに……。つまりは、僕の力だけでユウを完全に引き離すなんてできなかったんじゃん。これまた盲点だった。

 でもまあ、頑張ったよね、僕。非力というか無力でしかなかったけど、精一杯やったよね。誰にも責められることなんて――

「荒乱風波(ストーム・トルネード)っ!」

 師匠が呪力を解き放つ声が聞こえた。……って、作戦通りではあるけれど、決行が早すぎないか? ……さては、あまりにもスムーズにいかないものだから、ニーナさんがしびれを切らしたかな。

「ちょ、サーラさん、なにを!?」

 ユウが驚きの声を上げるも、そんなのが妨害になるはずもなく。
 師匠の放った強風(と呼ぶにはやや弱い風の波)が、背をこちらに向けてケイと話している鈴音さんを直撃した!

 師匠の提案した作戦というのが、これだ。彼女曰く、

『荒乱風波(ストーム・トルネード)で、ちょっぴり強引にくっつけちゃうのはどうかな? 顔が近づくとそれだけでドキドキするものだと思うし』

 とのこと。

 結果は、まあ、成功の部類に入るだろう。二人がカップルのように抱き合う、という体勢までには至らなかったものの、つんのめった鈴音さんがケイに向かって突っ込んでいき、ケイがそれをなんとか倒れずに身体全体で受け止める、という状態にはなったのだから。事実、「やったあ!」とニーナさんが歓声を上げてもいるし。

「ご、ごめん、ケイ……」

 呆然とした様子で、とりあえずというように呟く鈴音さん。頬も真っ赤になっており、ニーナさんの「いい雰囲気いい雰囲気」という割と大きめの声も聞こえていないようだった。
 が、しかし。

「いや、別に鈴音が謝ることじゃないだろ。むしろ――」

 ケイは動揺なんて微塵も見せずに鈴音さんを元通りに立たせる。そしてニーナさんのほうを向いて、

「一体、なんのつもりだ? ニーナ。それにマルツとサーラさんも」

「……あ、あれ? ケイくん、全然赤くなってないね、病気?」

「いや、どちらかというと、あそこまで真っ赤になっている鈴音のほうが病気っぽくないか? いや、いま言いたいのはそんなことじゃなくてだな」

「むう。どうやら今回は失敗のようだね。もっと動揺すると踏んでいたんだけど……。まあ、いいや。今回はこれで退いてあげるよ。
 しかし! ボクが敗れようともマルツくん発案の『ケイくんと鈴音さん、カップル大作戦! IN現守高校!!』は終わらない! 実行者を変え、場所を変え、いつの日か必ず達成される日がくるだろう! それではまた会う日まで、さらば! ふははははは!」

 言って走り去るニーナさん。いきなり姿を消してしまわないあたりは、彼女も少しはこの世界の常識を身につけたと評価するべきなのだろうか。

 僕とケイはしばし呆然とし――。

「ちょっとニーナさん! 勝手に僕を発案者にしないでくださいよ!」

「なんでそんな悪役口調なんだ、お前!」

 小さくなっていくニーナさんの背に向かって同時にツッコミを入れたのだった。




 それから数分後。
 早くニーナさんを追わないとなにをしでかすかわからない、と話をはぐらかしてその場を去った僕と師匠、リルの三人は、曲がり角のところで待っていたニーナさんと合流を果たしていた。ちなみに、ケイに言った『なにをしでかすか〜』はごまかしでもなんでもない僕の本音だ。だからこそケイもすぐに解放してくれたのだろう。

「ま、まったくニーナさんは……」

「あはは、ごめんごめん、マルツくん。でも、どうして失敗しちゃったかなぁ。上手くいくと思ったんだけど」

 ニーナさんの疑問に「もしかしたら」と師匠が口を挟む。

「ケイくんは鈴音ちゃんと距離が近すぎて、いまひとつ意識できずにいるのかもしれないね」

「マルツくんとソフィアちゃんみたいに?」

「うん、そんな感じ」

「や、いきなりなにを言いだしてますか、師匠」

 ちなみにソフィアというのは、魔道学会カノン・シティ支部の会長の娘であり僕の幼なじみでもある女の子のことだ。フルネームはソフィア・ルビーバレット。
 一緒にいる時間は確かに長かったし、仲良くもあったけれど、僕たちとケイたちの関係性は正直、かなり違うものだと僕は思う。なんというか、ソフィアは鈴音さんと違って積極的というか、『好き』だとか『愛してる』だとかすぐに口に出していたし。彼女はよく『想いは言葉にしなければ伝わらない』と言っていたけれど、あそこまで照れがないと、むしろそれは兄(あるいは弟?)に対する『愛情』の類であって、恋愛感情ではないんじゃなかろうかと思ってしまう部分もあって。

 それに比べると鈴音さんの反応は新鮮というか、いかにも『恋してる』という感じが伝わってきて――

「なんだ、魔法少年と魔女っ娘ではないか。どうして学校に来ているんだ?」

「うわぁっ!?」

「ひゃあっ!?」

「ふえぇっ!?」

「ぴゃうっ!?」

 突然、背後から話しかけられ、四者四様の悲鳴を漏らしながら飛び上がる僕たち。……ん? いまリル、『ぴゃう』って言いましたか?

 振り返った僕の視界に入ったのは、十人中九人は確実に振り返るであろう超絶美少女、『先輩』こと真儀瑠 紗鳥(まぎる さとり)の姿だった。
 彼女は若干不機嫌そうに続ける。

「……そこまで驚かれるとちょっとショックだな。私はそこまでお前たちに恐れられているのか?」

 ちょっと訂正。
 振り返った僕の視界に入ったのは、十人中九人は確実に振り返るだろうが、そのうち五人は彼女が口を開いた瞬間、確実に外見と中身のギャップに戸惑い、結果、目を逸らすという選択をするであろう超絶美少女、真儀瑠先輩の姿だった。

 とりあえず、彼女にとって新顔である師匠とリルを紹介し、ここに来ることになった経緯を『ケイくんと鈴音さん、カップル大作戦! IN現守高校!!』のことも含めて説明する。
 『カップル大作戦』のところで複雑そうな表情を浮かべたのが気になったものの、大方の事情を説明し終える頃には彼女の不機嫌も直ったようだった。というか、話のところどころ(師匠のトイレのくだりとか)では吹き出したりもしていたし。余談になるかもしれないけれど、その笑顔はとても魅力的で、この人、もっと笑ってればいいのに、とか本気で思ってしまった。

 そして。

「では、私がとっておきの案を出してやろう!」

「やっぱりそうなるかぁぁぁぁっ!」

 ある意味、当たり前すぎる展開だった。面白いこと大好き人間である彼女に『カップル大作戦』のことを話している段階から予想できるほどに当たり前すぎる展開だった。僕が全力ツッコミに合わせて頭を抱えたのは、むしろ予想できていたがゆえの余裕の表れだ。

「魔法少年、爆発を起こすような呪文は使えるな? 吊り橋効果を狙うぞ!」

「いえ、それはすでにニーナさんが案として出しましたから」

「なにいぃぃぃぃっ!?」

 ちょっと大げさにのけぞる真儀瑠先輩。そういえば、彼女には作戦会議中にどんな案が出たかなどの詳細は一切話していなかった。失敗失敗。

「ねえ、マルツ。真儀瑠さんって、いつもこんな感じ?」

 悲鳴を上げて飛びのいた先ほどの体勢――壁にはりついたままで師匠が問うてくる。僕はそれに無言でうなずいた。気を取り直して他の案を考え始めた真儀瑠先輩を「そっかぁ……」と見つめる師匠。……や、師匠だって割と似たようなもんじゃないですか。物腰や程度の差こそあれ。

「――――。あれ?」

「なんです? 師匠?」

「んー、なんでも。それよりふと思ったんだけど、例の作戦、なにも魔術を行使することに拘らなくてもいいんじゃない?」

 いま気がついたんだ、それ。
 しかし、そう思ったのは僕だけだったようで。

「そう言われてみればそうだね! ボクとしたことがうっかりしてたよ!」

「盲点、だね」

「魔法を使えるという前提条件があったからこそ、むしろそっちに固執してしまっていたな。うむ、陥りやすい罠だ」

 次々に同意するニーナさんとリル。そして真儀瑠先輩。……こ、この人たちは……。

「でも具体的にはどうやるの? サーラさん」

「おいおい、魔女っ娘。そんなのいくらでも思いつくだろう」

「それがボクたちの場合、普段から魔術に頼ってばかりいるせいか、魔術抜きといわれると、どうも頭の回転が悪くなっちゃってね」

「それはニーナさんだけじゃないですか?」

「な、なにおう!? マルツくんのくせに生意気な!」

「…………。この世界に来てから、テレビ見すぎなんじゃありません? ニーナさん。――まあ、それはそれとして、師匠。なにか思いつきます?」

 師匠に振る僕。「結局、マルツくんにだって思いつかないんじゃん」というニーナさんの呟きは無視しておくことにする。

「鈴音ちゃんに『ケイくんが屋上に来てくれ、だって』って嘘を吹き込むのはどうかな? で、そのあとにケイくんに逆のことを言うの。――あ、私たちが別行動をとってそれぞれに伝言すれば確実かもね。二人っきりにすればあとはどうにでもなるでしょ」

「なりますかね……」

 なにしろ、さっきの失敗があるからなぁ……。
 しかし師匠は「大丈夫。絶対上手くいくって」と自信たっぷりの様子。その自信は一体どこからくるのだろう。

「じゃあ、ケイくんには私が伝えに行くね。ほら、マルツやニーナちゃんが行ったら警戒されるかもしれないでしょ?」

「師匠だって警戒されておかしくないと思いますが……」

 さっき<荒乱風波(ストーム・トルネード)>を放ったのは他でもない彼女なのだし。

「大丈夫。上手くやってみせるから。マルツたちは鈴音ちゃんのほうをよろしくね」

 だからその自信は一体どこから……って、僕たち全員で鈴音さんのところに行くのか?
 その疑問を口にする前に師匠が真儀瑠先輩に向き直る。

「時間は、いつ頃がいいかな?」

「そうだな……。やはり、定番は放課後か。しかし、師匠さん一人で本当に大丈夫か?」

 真儀瑠先輩、『師匠さん』って……。
 だが彼女の懸念は正しい。別に誰かの身に危険が伴う作戦ではないけど、それでも作戦である以上、成功率はできるだけ高くしておきたいし。
 しかし、師匠は変わらず「大丈夫だって」とだけ繰り返す。……まあ、これでも師匠は『聖戦士』だしな。その彼女が大丈夫だと何度も言うのだから、これ以上心配することもないか。


 そして待つこと四時間弱。
 放課後になり、僕たちはそれぞれの役割を果たすために行動を開始した。

 ――とか表現すると、ちょっと格好よくない?


○神無鈴音サイド

 午後三時三十分。
 今日の授業とホームルームが終わり、私は校内のどこかにいるであろうサーラさんとりんを探して家に帰ろうと二階の廊下を歩いていた。
 それにしても、午後の授業内容をまったくといっていいほど憶えていないのはどうしたものか。けれど、それは仕方ないとも思う。だって、昼休みにあんなことがあったのだから。

 あれから隣の席に座る蛍の様子を授業中、休み時間を問わずにずっと盗み見たりしていたのだけれど、彼のほうは、しかし、まったくといっていいほど動揺していないようだった。まあ、それは当然なのだろう。蛍の認識上、私は彼の友達ではあるけれど、それ以上でもそれ以下でもないのだから。

 私のほうはマルツさんがやってくる前に起こった『《顔剥ぎ》事件』の際に、彼への感情がどういうものなのかを理解したのだけれど、まだそれを伝えようという気にはなれないし……。
 いや、気になれないというよりも、踏ん切りがつかない、勇気が出ないと表現したほうが正しいだろうか。蛍が私にとって大切な人だということは間違いない事実なのだけれど、その気持ちを伝えた先にあるものや、私が蛍と具体的にどうなりたいかがわからないというか、それ以上に拒絶されたらどうしようとか、そっちに思考が向くと、だったらいまはこのままでもいいんじゃないのかな、という風についつい考えるのをどうにもストップしてしまう傾向が私にはあった。

 でも、今日みたいなことがあると、本当にそれでいいのかな、と思ってしまうのも事実で。結果、頭の中が軽く混乱してしまい、結論を出すのはいつも保留としてしまう。

 もちろん、いつまでもこのままでいられるなんて思っていない。けれど、この距離を保っていたいとも思っていた。きっと、急いでもいいことはないだろうから。
 だからニーナさんの『実行者を変え、場所を変え〜』という言葉はどうしようもなく気になって。だって、それはつまり……。

 …………。

 いつもこうだ。
 このことを考え始めると、以前ほどではないにせよ頭の中がぐるぐるして、とても結論を出せそうになくなってしまう。
 だから、私はいつもそうしているように、思考をまったく別のものへと向けた。

 それは今日の朝、屋上で起きた『両腕のない悪霊』関連の事件のことと、二日前にテレビでやっていた『両腕のない死体』のこと。

 これは私の推測だけど、両腕のない状態で殺された人間とあの悪霊は同一の存在だろう。被害者は四十二歳の男性だったはずだし、あの悪霊も見た目はそれくらいだったから、間違いないはずだ。
 おそらくは殺された際に、殺人犯に恨みや憎しみを強く覚え、悪霊になってしまったのだろう。あるいは殺されたときの激しい苦痛のせいで心が壊れてしまった『ただの霊体』である可能性もあるけれど、あの霊体が成仏させなければならない存在である以上、これはどちらであっても変わらない。

 もっとも、私に成仏させることはできないようだったけれど。

 もちろんそれは単純な私の実力不足。天才的な霊能力者である姉さんや、姉さんと同格といわれているシリウスさんなら問題なく祓(はら)ってしまうのだろうし、シリウスさんの妹さんであるスピカさんにだって成仏させることはできるはず。もっとも、フィッツマイヤー家は霊の『感知』と『説得』に特化しているところがあるので、スピカさんが昼間、真っ向から浄霊しようとしたときには失敗したようだったけれど。

 ……そうだ。スピカさんのこともあった。
 これに関しては蛍のことは関わっていない。いや、もちろん彼女が蛍を監視している以上、無関係ではないのだけれど、いま私が考えていることとスピカさんが来日してきた理由とは関係がないとでもいうか。

 彼女のなんとも複雑そうなため息を聞いたのは屋上でのこと。
 確か、私の浄霊が失敗した直後――スピカさんがあの悪霊を祓おうとアクションを起こす直前のことだ。

 あのため息に込められていたのは、まず私の実力に対する呆れ。私の力を目の当たりにして覚えた『やれやれ』という感情だろう。正直、それに関しては悔しく思うものの、私にはそういう反応をとられるような実力しかないのだから、彼女のその心の動きは自然なものだとも思えた。

 次に感じとれたのは落胆。
 それは、私の実力が明らかに彼女に劣っていたから生まれた感情。

 同い年だったり、有名な霊能力者の家に生まれた者だったり、次女だったり。そして、姉と兄という違いこそあれ、自分よりも優れた存在が常に身近にいたという境遇だったり。
 スピカさんと私にはいくつもの共通点がある。それこそ、相手に自分を重ねて見てしまえるほどに。

 霊能力者であることにこだわることをやめた私には、ある意味どうでもいいことでさえあるけれど。
 霊能力者であることに誇りを持っている彼女からしてみれば、よく似た境遇にあった私――『神無家の次女』は、自分よりも劣っているべきではない、という思いがあったのだろう。

 そして最後。あのため息の大部分を占めていた感情が、安堵。
 自分が私に劣っていなかったという、安心感。優越感とはちょっと違う。自分にも価値があると確認できたときのような、ホッと胸を撫で下ろすような心の動き。

 それは、私より――『神無家の次女』より絶対に劣っていたくなかったという思いの表れだ。もちろん彼女が私に抱いた『落胆』とは矛盾した感情ではあるけれど、でも人間の心はそういうものだとも、私は思う。矛盾したところのない人間なんて、絶対にいないのだから。

 敢えて、その心理を矛盾なく説明しようとするのなら。

 自分より上ではない。けれど自分と比べて明確に劣っているわけでもない。

 スピカさんは、私にそういう人間であってほしかったに違いない。それなら、夢にも敵うとは思えない人間を『きょうだい』にもってしまったという現実に対するコンプレックスを『弱み』としてではなく打ち明けることができるから。
 あるいは、好意的な感情からライバル視することだって、できるかもしれないから。

 けれど、私にはそれに適う実力はなかった。だから、彼女は落胆した。私が自分よりも優れた霊能力者ではなかったことに安堵も同時に覚えながら。

 勝手だとは思うけど、それは私の推測だって同じこと。根拠なんてなにもない、ただの勝手な妄想だ。だから、もしこの推測が当たっていたとしても、それはきっとお互い様。腹を立てることもない。

 そんなことを思いながら、なんとなく窓の外に目をやる。
 すると息を切らせながら昇降口へと入っていく金髪の少女の姿が目に入った。

「……あれ?」

 いまのは、スピカさん?
 だとすれば、噂をすれば影とはよくいったものだ。いや、別に誰かと彼女の噂をしていたわけでないけれど。

 彼女は確か『両腕のない悪霊』を追って、一旦学校から出て行ったはずだ。それが戻ってきたということは――

「あ、いたいた! 鈴音さん!」

 思考をさえぎるようなタイミングで誰かの声が飛び込んでくる。誰だろうと視線を前方に戻すと、そこにはマルツさんの姿があった。いや、それだけじゃなく、

「りんにニーナさんも。それに、真儀瑠先輩も? 一体どうして……。あ、でもサーラさんは?」

 サーラさんも一緒にいれば探す手間が省けたのに、と思いながら訊いてみると、

「えっ! あ〜……、し、師匠はちょっと用事があるって」

「用事? サーラさんが? なんの?」

「え? さ、さあ。ああ見えて師匠って意外と秘密主義だから……」

 なぜか脂汗をダラダラと流しながら答えるマルツさん。「それより」と代わりにニーナさんが口を開く。

「鈴音さん、さっきケイくんに伝言を頼まれたんだ。屋上に来てくれって」

「お、屋上……?」

「そう、屋上。話したいことがあるから一人で来てくれ、僕も一人で待ってるから、だってさ」

 蛍の伝言? 一人で待ってる? でも、なんで屋上……?

「一人でって、ユウさんは……?」

「へ? え、えと、ユウさんは……サーラさんと一緒に行動中?」

「なんで、疑問符?」

「えと、それは、ほら……。それよりも! 細かいことはいいから早く屋上に行って行って! ケイくんが待ちくたびれちゃうよ!」

「ほ、本当に待ってるの……?」

「もちろん! だからほら、早く!」

「……う、うん!」

 蛍がしたいという話。その内容が気にならないわけがない。
 私はりんに昇降口で待っているように言って、大急ぎで屋上へと向かった。




 屋上に続く扉には鍵がかかっている。
 理由は単純で、ずっと前から立ち入り禁止とされているほどに、屋上が危険な場所と認識されているからだ。もっとも、今日の朝まではそれほど危険な場所だとは思っていなかったのだけれど。

 しかし、現在の屋上への扉には鍵がかかっていない。
 これは朝、あの悪霊に憑依されたりんが、憑依された者特有の怪力でノブごと鍵を破壊したからだ。
 けれど、もう放課後なのだし、修理まではできないまでも屋上に出入りできないようにしてあると私は思っていたのだけれど。

「思いっきり開いてる……」

 扉はなにかで固定されることもなく、半開きになっていた。よくよく考えてみれば、蛍が先に来て待ってるというのだから、もちろん出入りできるようになっているに決まっているのだけれど。
 けれど、蛍の話というのは一体なんなのだろう。まさか、告白とか……? いやいや、昼休みやそのあとの態度から考えればそれはないはず。……でも、もしかしたら、もしかするかも……?

 深く、深〜く深呼吸。そして扉の端に手をかけ、押していく。

 そして、一歩、また一歩とわずかに震える足を進め。
 
 蛍の姿を探して、角を曲がる。

 瞬間、目に入る、風になびく髪。

 青く、長い、髪。

 そこにいたのは――。

「……サーラさん?」

「あ、やっと来たね。鈴音ちゃん」

 にっこりとサーラさんは笑う。振り向き、両手を背中のほうで組むように回しながら。

「あれ? ユウさんと一緒にいたんじゃ……?」

 微笑をそのままに彼女は。

「ユウちゃん? さあ、知らないけど」

「そう、なんですか? ニーナさん、ユウさんはサーラさんと一緒にいるって確かに……」

 ゆっくりと、歩をこちらへと進め。

「う〜ん、そう言われても私は放課後、ずっと一人で行動してたよ?」

「そういえば、ちょっと挙動不審でしたもんね、特にマルツさん。もしかして、嘘だったとか……?」

 三歩分ほどの距離を残して、私の前で止まり。

「あはは、そうかもね。――ところで、ケイくんのことなんだけど」

「あ、そうそう! 蛍、見ませんでした? ここに来ているはずなんですけど!」

 その柔らかな微笑が。

「ん〜、見てないな。というか……」

 唐突に。

 不自然で、どこか歪(いびつ)なものに変わる。

「それ、嘘だから」

 ――刹那。

 腹部を、強烈な熱さが襲った。

 そこにあるのは、サーラさんの白い右手と、鈍い輝き。
 コンビニで百円も出せば買える、ありふれた果物ナイフと、それを握る彼女の右手。……後ろ手に隠されていた、右手。

「――え……? サーラ、さ……」

「――ごめんね、鈴音ちゃん」

 その言葉と同時に、ナイフが引き抜かれた。
 腹部に生まれる更なる熱。たまらず、うつ伏せにアスファルトの地面へと倒れる私。

 最後の瞬間(とき)、力を振り絞ってわずかに向けた瞳に映ったのは。

 振り上げられた、私の血に濡れたナイフの刃と。

 サーラさんの、狂気を孕んだ歪な笑顔だった。




 ――暗転。




――――作者のコメント(自己弁護?)

 ギリギリでした。
 なにがって、もちろんこれのアップが、です。まさか一日も置かずに見直しをしてアップロードすることになろうとは。
 ……はい。これからはもっとちゃんと時間に余裕を持って執筆しようと思います。

 そんなわけでルーラーです。ここに『マテそば』第一章の第八話をお届けします。
 いや〜、ようやく物語が動き始めました。もちろん前回も動いたといえば動いたのですけどね。

 実はこの回のラストは第一章のプロットを立てるにあたり、いくつか考えていた『見せ場』のひとつだったりします。なので、『やっと書けた』感も強かったです。
 しかし、やっぱり自分で考えた山場的なシーンは書くときにも力が入りますね。どうやったらドキドキハラハラしながら読んでもらえるだろう、と何度も直しながら書きましたよ。
 ジェットコースターでいうところの『落ちる』ポイントだということもあり、全力を込めて書きましたのでこちらの思惑通り、展開に驚いてもらえれば嬉しい限りです。

 あ、一応鈴音サイドに入るまでのシーンにも触れておきますか。
 正直、ここまでギャグ会話が入るとは思ってもいませんでした。これに関しては本当にその場のノリでどんどん入れてしまいましたよ。その分、シリアスとの落差が激しいだろうな、と思っています。あるいは、シリアスなシーンを魅せるためのギャグ、という感じに機能してくれているかも?

 さて、ではそろそろ恒例のサブタイトルの出典にいくとしましょう。
 今回は『スパイラル〜推理の絆〜』(スクウェア・エニックス刊)の第六十四話からです。意味は『たおやか(だと思うのですが、どうでしょう?)なサーラの狂える手によって刺される鈴音』というものです。

 この展開、実は『マテリアルゴースト3』が出た頃には考えてあったんですが、『マテリアルゴースト4』で蛍が刺されてしまったため、どうにも二番煎じ感が拭えなくなってしまったのですよね(苦笑)。
 でもまあ、それでもやりたい展開でしたので、既出であることは無視してやらせてもらっちゃいました。これは同人小説ならではの強みですね(笑)。

 それにしても、今回はまさに自己弁護でしたね。僕の作品、かつてここまで自己弁護に走ったあとがきがあったでしょうか。うん、でもこんなあとがきもアリですよね。

 それでは、また次の小説で、一ヶ月以内に会えることを祈りつつ。



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