パーティー
「んじゃ、みんなグラスを持ってー」
恵が言うと、珠実と朝美が看板にかかっている、布をとろうとした。
「おっと、まず主役を呼ばないとねー」
恵がいきなり立ち上がる。
そして、
「ちょっ、まさか……」
白鳥がうろたえた声を出す。
バコッ!
なんと恵は白鳥を梢に向かって、蹴り飛ばした。
「ちょっと、僕はボールじゃないんですから!」
だいぶ痛かったとみえる。
「まあまあ、これっきりだわよ」
恵には軽く、あしらわれてしまった。
「!!」
恵の言葉を聞き、白鳥はギクッとなった。
梢もようやく起き上がった。
(早紀さんじゃありませんようにっ)
白鳥は思わず心の中で、そう願ってしまった。特に、早紀の場合、やたら絡んでくるし、絡み方が乱暴だし、朝まで呑むしで、とにかく大変なのだ。
「? どうしたの、お兄ちゃん。なんか怖い顔してる」
どうやら、今度の人格は、魚子のようだ。
「あ、ううん。別に怖い顔なんてしてないよ」
白鳥は、とっさに笑顔を作った。
(しかし、魚子ちゃんでよかった)
またも、そう思わずにはいられない、白鳥だった。
魚子の場合、子供なので、大抵夜遅くになると、眠ってしまって、お開きになるのだ。
「それじゃ、布とっていいだわよー」
改めて、恵が言った。
「はいです〜」
「じゃあ、とるねー」
珠実と朝美が布を下に下ろした。
「あっ、ここ取るの忘れてました〜」
板からシールみたいなのを珠実がはがした。はがれた所には、『魚子ちゃん』と書いてあった。
少し上のほうにもシールがあった。
きっと『早紀ちゃん』と書いてあるのだろう。
看板には通して、こう書いてあった。
『魚子ちゃん、いままでありがとう、これからもよろしくねパーティー』
このパーティーの名前は、半分本当で、半分嘘だ。
だって、もう『これから』なんてないのだから……
部屋の中は、しん、と静まりかえっていた。
「どっ、どうしたの、それじゃ、カンパーイ!」
恵は、静まりかえった部屋に、活気を戻そうと大声を上げた。
「桃ちゃん、このパーティー、誰が考えてくれたの?」
魚子が恵に訊く。
「えっと……そうそう、白鳥クンと、そのお友達のジャックさんだわよ」
「へー、そうなんだ。ありがとう、お兄ちゃん」
にっこり笑顔で白鳥にお礼を言うと、ジャックを見て、魚子は急に目を、くりくりさせた。
「な、なんだね」
ジャックは、あまりに魚子が、じろじろ見るので、自分から尋ねてみた。
「おじさんどうして、そんな変なカッコしてるのー?」
「!!」
ジャックは昨日に続き、言われたので、ムチャクチャ落ち込んだ。
「ところで……」
白鳥は低い声で、恵に尋ねた。
「僕はこのパーティーの用意もしてないし、考えたのは桃乃さんじゃなかったですか?」
「それが?」
「それが? じゃないですよ。なんで魚子ちゃんに、考えたのは僕だ、なんて言ったんですか?」
恵は軽く笑って言った。
「だって、この騒動の原因を作ったのって白鳥クンじゃない」
これを聞いた途端、白鳥は、もう何も言う気が、なくなった。
数時間後、魚子も眠ってしまい、パーティーはお開きになった。
「白鳥クン、じゃあ、明日ね」
恵の言葉は、白鳥の気持ちを、揺さぶるものだった。
「ええ」
正直、白鳥の決心は、ぐらついていた。
いよいよ明日。運命の日は迫る。
――――作者のコメント(自己弁護?)
ここまでで原稿用紙換算でちょうど50枚目と相成りました。
そんなどうでもいい前口上であとがきを始めます、ルーラーです。しかし、今回本当に短いなぁ……。どうしてこんなに短く感じるのか……。ああ、そうか。『黄昏二次』の文章量が多かったからですね。きっと。
さて、このお話も残るところあと3話です。泣いても3話、笑っても3話なのです。
僕としては、もう、この稚拙過ぎる文章を書くのがある意味大変で大変で。早く完結させてこの物語から逃れたいものです。
まあ、これが完結しても、もうひとつ『まほらば』の二次は書く予定なわけですけど。
気が早いですが、その『もうひとつのまほらば二次』に関して少々。
こちらでは投稿してもらったキャラを何人か登場させるつもりです。これに比べれば、少しはマシな作品になっているはずです。
キャラ・サブタイトルを投稿してくださった方、もうしばらくお待ちください。
それでは、『まほらば〜三つの心〜』の第七話の執筆にとりかかることにします。先はそんなに長くありませんので、もう少しお付き合い頂けると幸いです。
では、『まほらば〜三つの心〜』の第七話でお会いできることを祈りつつ。
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