一件落着?



「……さん! 大家さん!」

 白鳥の声が聞こえる。

「……!? てめェッ! なにしやがる!」

 目を完全に覚ました早紀に、早速白鳥は殴られてしまった。

「さ……、早紀さん?」

 期待を含んだ声だった。
 果たして、答えは。

「そーだよ、悪いか、アタシで!!」

 やはり早紀だ。

「よかった……。やっぱり早紀さんだ!!」

 もはや、白鳥は涙ボロボロだ。

「あーもう、メソメソすんな! 殴られて頭おかしくなったんじゃないか?」

 早紀に殴られまくって、タンコブだらけになっても、白鳥は笑っている。
 恵もそれを見て、涙を拭い、笑みをこぼした。

「よかったわね、白鳥クン……」

 早紀もさすがに、うろたえた声を出した。

「な、なんだよ、桃まで。気持ち悪りいなあ」

 それから恵は、すべてを吹っ切るように大声で言った。

「よーし、宴会だわよー。白鳥クンの部屋で!!」
「おっし、飲むぞー。今度こそ朝まで!」
「えっ、まだ昼なのにー」

 早紀の意見に、今度は白鳥が、うろたえた声を出す番だった。


「カンパーイ!」

 恵や珠実、早紀は白鳥を押しのけ、宴会を始めてしまった。

「あーあ、まあ、これは取り返しつくからいいか」

 白鳥も少し、ほんのちょっとだけ、早紀や魚子、そして多重人格を理解しようと思った。
 本当にちょっとだけ、だけど。

(焦ること……ないよな)

 一日に一歩も歩けなかったら、一歩でいい。
 殴られはしても、タンコブの数を減らせばいい。
 そうしていつか、理解すればいい。

 そう、本当に大事なのは、ジャックのように無理強いで治すより、恵や珠実のように面白がってでも、打ち解けるようにすること。
 すると恵が思い出したように言った。

「そういえば明日から学校だわね」
「それがどーした、ホラ、飲むぞ」

 早紀は学校のことを考えないのだろうか。
 直後、白鳥は固まってしまった。

「か……、課題、忘れてた……」

 しかし早紀は、

「ホレ、いーから飲め!」

 真昼に始めたのに、本当に朝まで飲む気らしい。

「よくないですよ。課題やるんですから、みんな出てってくださいよー」

 そこまで言って、はっと気づいた。
 ポケットから『梅酒』と書かれたラベルを取り出し、恵に訊く。

「梅酒以外のお酒はどこにあるんですか? これを使います」

 恵はあっけらかんと言い放った。

「梅酒しかないわよ」

(……こ、これだけは理解したくないっ)

「おらっ、白鳥飲めっ!」

 白鳥は早紀にラッパ飲みをさせられ、目が白黒していた。


 ――人格が代わる瞬間(とき)、三つの心は記憶を共有できる。
 平成のブラックジャックこと神ノ手持三のただ一冊の本『多重人格とは』に書かれている一文である。

 本当なのか、定かではないけれど。



 ――まほらば〜三つの心〜 完――



――――作者のコメント(自己弁護?)

 『ルーラーの館』の最初にして、僕が生まれて初めて完結させた小説、『まほらば〜三つの心〜』、いかがでしたでしょうか?
 6年前に原稿用紙に書いたものを写したものなだけあって、クオリティはかなり低いことと思います。自分でも『クオリティ低いなぁ』と思うのですから、間違いなくクオリティが低いことでしょう。文章も稚拙すぎますし。

 ただ、この物語を書いている間、ずっと『自分も多少は成長していたんだなぁ』と思っていました。自分の作品のレベルをかなり下に見れるということは、つまりそういうことですからね。

 小説を書くのが下手な人であっても、書いてさえいれば、上手くなれます。好きでこそあれば、上手く書けるようになります。それは『ザ・スペリオル』や『マテそば』とこの作品のクオリティを比べてみれば、よくわかることだと思います。僕も最初はこんな稚拙な文しか書けなかったのですよ。それを伝えたくて、このシリーズを書き始めたというのも、動機として確かにあるのです。

 『書かなければ始まらない』とよく聞きますが、やはりその通りですよ。どんなに下手な小説であっても、書き続けなければ上手くはなれません。そして、上手くなりたいのなら、書き続けなければなりません。これを苦に思う人は、プロにはなれないのでしょう。おそらく。

 さて、期せずして真面目な話をしてしまいましたが、『まほらば〜三つの心〜』はこれにて完結です。別の『まほらば二次』――『まほらば〜在りし日の想い出〜』をまだ書いてないので、まほらばキャラたちの物語はまだ書くと思いますが、とりあえずこのお話はこれで完結なのです。

 次に書くのは『ザ・スペリオル〜夜明けの大地〜』の第三話でしょうか。それとも『マテそば』の第十二話? あるいは『ドラゴンクエストV』の二次になるかもしれません。まあ、とりあえずは『スペリオル紋章編』を少し執筆しますけど。ああ、それに『R.N.Cメンバー』の書いたネット小説も読みたいです。

 それでは、少しばかり期間が空くかもしれませんが、次に書く小説でお会いできることを祈りつつ。



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