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綾乃、起動
著者:新夜詩希


―1―

 朝―――。それは希望に満ち溢れた1日の始まり。

「あ〜ん!寝坊しちゃいましたわっ!」

 朝露の煌き、小鳥のさえずり…。

「きゃー!ハンカチが見当たりませんわっ!」

 人々はその透き通るような眩しい光を仰ぎ、そして願う。色とりどりの幸福を………って……。

「ね、寝癖が……これはまずいですわっ!」

 せっかく純文学小説ちっくに始めてやったと言うのに、雰囲気を完膚なきまでにぶち壊してくれた、この喧しい少女。

「あらお父様、そこのお醤油を取って下さるかしら?」

 彼女の名前は、鏡弥 綾乃(かがみや あやの)。あり得ない事に、この物語の主人公である。ま、一番あり得ないのは彼女を主人公としてチョイスした作者だが。
 寝坊したのであれば、悠長にメシ食ってる場合じゃないだろう、綾乃。

「あらお母様、カプチーノを淹れて下さるかしら?」

 綾乃は都麦学園(つむぎがくえん)に通う高校一年生。成績は……彼女の名誉の為に伏せておいた方がいいだろう。
 食後のコーヒーまで飲む気なのか。ふてぶてしいにも程があるぞ、綾乃。

「あらトメさん、わたくしのカバンは何処かしら?」

 彼女の容姿を一言で言うならば『美少女』と定義して問題はないだろう。しかし中身が伴っているかどうかはまた別問題。
 カバンくらい自分で用意せんかい、綾乃。

「それではお父様、お母様、トメさん、行って参りますわ」

「おお、綾乃。父さんは心配だ。早く帰って来ておくれ!」

「綾乃ちゃん、知らない人に付いて行っちゃダメよ!」

「行ってらっしゃいませ、お嬢様」

 何やらツッコミ所満載の両親と、至って常識人の使用人・トメさんに見送られ(?)、近隣住民からは『お城』と呼ばれている自宅を後にする綾乃。
 この『お城』と言う表現。決して比喩でも誇張でも皮肉でもない。外装も内装も完全に『お城』なのだ。非常識な事に。まあ非常識なのは家だけに留まらないのだが。

 これは中世ヨーロッパを舞台にした貴族の優雅な生活を描いた物語……では断じてない。悪の大魔王を打倒すべく立ち上がった勇者とその仲間たちを描いた冒険活劇……でも勿論ない。欲望と謀略が渦巻く裏世界を己の腕一つでのし上がる少女のサクセスストーリー……だなんてある筈がない。至って一般ピーポーが集まる(一部を除く)都麦学園が舞台なのだから。じゃあこの物語は何なんだと問われれば………ふむ、よく分からん。物凄く寛大な視点で分類すれば『ラブコメ』にはなると思うのだが。ただ、そのジャンルにきっちりと当て嵌めるには少々、いや、かなり重要なポイントが欠損している為、非常に難しい所なのである。そのポイントが何なのか知りたい好奇心旺盛な方は、このまま読み進めて頂くのが一番だろう。割かしすぐに判明すると思うが。何か嫌な予感を感じ取ってしまった第6感の鋭敏な方は、この時点でやめといた方がいい。多分その予感は的中しているから。

 ま、これはそんな物語である。読み進んでみたいと言う物好き……あ、いや、勇敢な方が一人でも存在している事を祈りつつ。



 申し遅れた。私は今作の地の文担当、『脳内ツッコミ野郎』こと『フランス生まれのニクイ奴』こと『ローキックの鬼』、ミッシェル権八(ごんぱち)だ。綾乃を野放しにしてしまったらさすがに物語が成立しないだろうと危惧した作者の為、この度遠くアルゼンチンより密入国にて参上した。まあ一つ、宜しく頼む。アミーゴ。



―2―

 時刻は正午をやや回ったあたり。お昼休みはウキウキウォッチング。寝坊したにも関わらず、あれだけ余裕ぶっこいてりゃ当然の結果と言える大遅刻をやらかした反省も何処へやら、綾乃は今日も今日とて、足繁くいつもの場所へと向かう。

「ああ……今日も素敵ですわ……」

 辿り着いた先は、2年生の教室。こんな所に明らかなる1年生の綾乃が居る絵面はあまりにも奇異に映るものだが、当の本人は欠片も気になどしていない。
 綾乃は教室の入り口ドアに体半分程隠す様な格好で目だけを教室の中、一人きりで窓際に座る生徒へとあらゆる物をも焦がさんばかりの熱視線を送っている。

「ああ……この綾乃、貴方様の為なら死さえも厭わないですわ……」

 そう、綾乃はこの生徒に恋をしている。それもかなりディープに。しかしこれは最早『恋』などと言う甘酸っぱくてほろ苦くて、それでいて見ているこっちの方がこっぱずかしくなる様な可愛らしいシロモノではない。明らかにその領域を凌駕している。何故にここまで入れ込めてしまえるのかと言えば。

「ああ……こんな気持ちは初めてですわ……」

 つまり『初恋』なのだ。だからと言ってこれ程までに入れ込めるのはさすがに常人とは掛け離れた感覚を持っていると言わざるを得ないのだが、その理由は先程の『綾乃を育んだ温床』を御覧頂いたならお分かりだろう。
 そして何よりこの綾乃、更に常人と掛け離れたポイントを持っている。それは……



「ああ……お慕い申しておりますわ……『お姉さま』!」



 ……お分かり頂けただろうか?綾乃が恋をしている相手、不幸にもロックオンされてしまったその生徒の名は『九樹宮 九恵(くきみや ここのえ)』。颯爽とした雰囲気を持ってはいるが、れっきとした女生徒である。ぶっちゃけてしまえば、ガールズラブ。百合。レズビアン。青少年にとって抗い難い魅惑的で淫靡なシロモノだ。言うなれば『漢のロマン』だ。男子諸君には決して到達出来ないからこその禁断の花園。そう、それはまさに固有結界<男の遠き桃源郷(heavenly hallucination)>なる、ちょっとカッコよさげにして何かが決定的に間違っているような、それでいてまったりと濃厚でかなりヤバげな力が発動しているのだ!…まあ完全に一方通行なので、そこまで甘い事にはどうあってもならないのだが。
 九恵はウェーブ掛かった長い髪を揺らして、気だるそうに外の光景を見つめる。その胸に去来する想いは、一体どんなものだろうか。実はこの九恵もいいトコのお嬢様。アンニュイな空気がよく似合う。だがそれ故、周囲の人々には何となく近寄り難いオーラを放ってしまっているのだ。不憫な子。

「『お姉さま ああ、お姉さま お姉さま』…。す、素晴らしいポエムが完成してしまいましたわっ!」

 …う〜む、この手のボケ(綾乃自身は至ってマジだが)は本来、『脳内ツッコミ野郎』の面目躍如となるはずなのだが、彼女の発想に関しては若干こちらのキャパを凌駕している部分があるようだ。仕事放棄と見なされても致し方ないが、ここは敢えてツッコミはなしの方向で宜しく頼む。この仕事が片付いたらこいつの頭を叩き割って中身を見てみたい。意外とプリンか何かが詰まっているのかも知れない。
 偶然近くを通り掛かった男子生徒が体操選手かと見紛う程アクロバティックにズッコけていたが、まあ特に外傷はなさそうなのでほっといても大丈夫だろう。内面の傷はどうだかは知らないが。

「おい、鏡弥。毎日毎日飽きないな……」

 突然背後から声を掛けられて、綾乃は振り返る。そこには綾乃の担任教師が立っていた。

「もう予鈴が鳴ってる。教室に戻るぞ」

 気付けば確かに午後の授業の予鈴が鳴り響いている。幸福な時間はあっと言う間に過ぎ去るものだが、綾乃の場合はこの昼休みがまさにそれだろう。九恵に魅入ってしまって午後の授業をボイコットする事もしばしば。なので最近はこうして担任が綾乃を連れ帰る事がお決まりになっているのだ。担任も慣れたもので、さっと綾乃の首根っこを掴んで引きずって行く。

「ああ…お姉さま……。綾乃は……綾乃は………ッ!!」

 涙を流して担任に引きずられる綾乃。きっと綾乃の頭の中では『ドナドナ』がBGMっているのではなかろーか。傍目にはかなり非人道的に見えるが、ここの生徒達も慣れたもので、誰一人綾乃に同情する生徒はいない。

 ま、何にせよ、こうして綾乃の至福の時間は終わりを告げる。そして、明日もまた来ようと心に強く、それはそれは強く思う綾乃なのであった。



第2話に続く…………のか?



――――あとがき

 どうも。果たしてこんな破綻した物語がちゃんと成立するのかどうか、ものっそい不安いっぱい胸いっぱい、「これから一体どうなっちゃうの!?シキ、ドキドキしちゃうっ!!」とは欠片も思っていない危険人物、新夜シキです。この度『マテそば二次:綾乃☆オーバードライブ♪』を書いてみました。…う〜む、ツッコミ所満載だあ…。
 そもそもまだ登場してもいない、さらに自分で投稿したキャラを使った小説なんて果たして『二次小説』と呼べるのだろーか。呼んでいいのだろーか。かなりダメな気がしますが。
 因みに、今後の展開については…まあ大まかに決まってはいるものの、実際手を付けるのはいつになる事やら…って感じですね。何しろ文章が壊れまくっているので、書くのに時間掛かる…。会話がない&権八がよく喋る所為で地の文やたら多いし。
 とはいえ、出来る限りは頑張ってみようかなと。『第1話』と銘打っている以上、2話くらいは書かないと詐欺ですし。
 ま、気長にお待ち下さいな。って、こんなの楽しみにする人がいるのかどうかは分かりませんが……。
 で、では〜。



――――管理人からのコメント

 ……濃、濃いですね〜……。
 いや、本当、笑わせてもらいました。九恵のセリフがなかったのが残念といえば残念ですが……。
 地の分を担当するキャラ『権八』もインパクト強かったです。

 こういう『作者(あるいは作者の心境を代弁するキャラ)がツッコミ地の文でを担当する特殊な三人称小説、僕もちょっと書いたことありますし、実際に出版された小説の中にもありましたが、この形式、実際に書いてみるとすごく難しかったりするのですよね。

 また、『マテそば』といかにしてリンクさせようか、という楽しみもありました。
 さてさて、第2話の投稿も楽しみにお待ちしておりますね。
 それでは。



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