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第二話
著者:shauna


 始まりは、一ヶ月前・・・

 それは、意外と単純なことだった・・。




 「温泉・・・・」




 久しぶりに聖戦士とその仲間が集まっての食事会・・・

 シルフィリアの屋敷、レウルーラで皆で楽しく駄弁ってた時にそれは起きた・・・。

 アリエスの作ったおいしい料理に10人が舌鼓を打っていたその時、一人黙り込んでいたミーティアがその言葉を発したのだ・・。

 シャンデリアの掛かる豪華な天井に右腕を突き出し、まるで天に神様でもいるかのように愛おしそうに恍惚の表情を浮かべながら。


 「それはこの世の楽園・・闘いによって精神と肉体を削られた私達戦士にとって最後の癒しスポット・・・・」



 その言葉に一同はナイフとフォークを置き、給仕をしていたアリエスも持っていたワインを零しそうになる・・。

 何の脈絡もなく発せられたその言葉は、周りに居るモノを不安にさせた。

 それこそ、最近は戦いばかりの日々だった。
 だから、あまりの激務に精神をやられてしまったのではないかと。
 ってか壊れたんじゃないかと・・・


 「ミーティア?」


 目の前に盛られた“ハーブの生春巻き風替り鉢”から目を離してセレナは心配そうにミーティアを見つめる。

 その隣ではアスロックが真鯛のモルソーと才巻海老のサラダ仕立てを黙々と食べ続けていた。



 確かに、この光景は外部の人間から見れば何処となく戦慄すら覚える光景だろう。



 しかし、いつも身近にいるアスロックからしてみれば、ミーティアの思いつきなど日常茶飯事のことだ。

 ある種の天才は自分の思考とか妄想とかをすぐに行動に移したくなる癖があると言うが、天才魔道士たるミーティアにも少なからずそういうところがある。

 それ自体は別に悪いことではないのだが・・・

 問題なのはそれに周囲を巻き込むこと処だった。

 「ああ、温泉が私を呼んでいるわ!戦いで疲れ、傷付いた珠のお肌が温泉を求めているわ・・・」

 アスロック以外の視線は自然とミーティアに集まっている。

 「ミーティアさんにお酒振る舞いました?」

 シルフィリアがアリエスを呼び寄せて耳打ちした。

 「食前酒にショットグラス一杯だけ蜂蜜酒を・・・でも、そんなに強い酒じゃないんだけど・・・」


 「ドローア!」


 「は!はい!?」

 ビシッと音がしそうなぐらい勢いよくミーティアがセレナの向かいでこちらを見てるドローアを指差す。

 「あなたもそう思うでしょ!?どうせなら幼馴染は美人で珠のお肌の方がいいと思うでしょ!?」

 「まあ、それはそうですけど・・スケジュー・・・」

 「ファルカスさん!人生は短いの!」

 「お!?おぉ・・・」

 「そして、花の命はもっと短いの!!」

 「おっ・・おお・・・」

 「ミーティアさん・・ちょっと落ち着いて・・・」

 「マルツくん!!」

 矛先は自然となだめようとしたマルツへと向く。
 「そんな人生が戦いだけで・・世界の為に戦うだけで終わるなんて、つまらないと思わない!?寂しいと思わない!?思うよね!!思うでしょ!?思いなさい!!王女命令!!」

 腰に手を当てて力説するミーティアにシルフィリアですら唖然とする・・・。

 「あの・・・ミーティアさん?」

 「何!?」

 「温泉ならこの屋敷にもありますよ?別館のサファイアルームという施設に温泉をはじめとする娯楽施設なら完備してますけど・・・」


 「あ・ま・い!!」


 ミーティアは目の前で進言するシルフィリアを指差した。

 「みんなでどこかに行って温泉に浸かって、大きい宴会場でお食事するから楽しいんでしょ?今日みたいなロイヤルメニューのフルコースもいいけど、たまにはおいしいお刺身とかお吸い物とか天婦羅とか照焼とか食べたくなるでしょ?ってかそう思え!!王女命令!!」     


 「いや・・わたし聖蒼きぞ・・・」


 「そんなことはどうでもいいの!!」

 「よくはないと思うけど・・・・」
 「お姉ちゃんは黙ってて!!とにかく、私は温泉に行きたいの!たまには息抜きしたいの!!ってか息抜きしなきゃ死ぬ!!いや!死んでやる!!」

 唖然とするみんなの中でドローアだけが手で目元を覆った。

 というのも、おそらくミーティアがこんなことを言い出した原因も自分にあるということに気が付いたからである。

 今からさらに一ヶ月前・・・。

 旅の道中、ドローアはたまたま、フロート公国の北にある独立商業都市“ユフイン”に行った時のことを話題に上げたことがきっかけだった。

 でもって、大抵の場合、想像というのは放っておくと自然に膨張していくものであり、戦闘のストレスも相まって、それが一ヶ月後の今、爆発したのだろう・・。

 そんなわけで、ほとんどモンスター退治でいっぱいだったスケジュールに無理やり空きを作ってやってきたのが、ユフイン温泉郷だったというわけである・・。

 「ってわけで行くわよ!!!ユフイン!!!!ドローア!!スケジュール調整は任せたわ!!!マルツくん!!!あなたは何としてもファルカスさんとサーラさんのスケジュールを調整しなさい!!!シルフィリア様は馬車の手配!!アリエス様はそのシルフィリア様の補佐!!!わかった!!!?」

 いろいろ突っ込みどころ満載なのだが、とにかくこうと決めたミーティアがそう簡単に意見を変えるはずもない。

 つまり、こんな適当な理由(こんなミーティアの独断の我儘)で聖戦士及び、聖蒼貴族の慰安旅行は企画されたのだった。



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