ヴァンパイア十字界 第一巻



○第一話 黒鳥と赤バラ

 この作品は城平先生のものにしては戦闘シーンが多いな、と思った覚えがあります。なにしろ始まった途端にバトル、またバトル、ですからね。でもそこにちゃんと論理的な勝利法を組み込んでいる辺りはさすがだな、と思います。

 ちょっと舞台背景が多くて、それをいちいち挙げるのは面倒なのでパス。コミックスを読んで理解してください。

 僕が思う最初の見所は、最近使われなくなって久しい『振動刃(ヴァイブレイド・エッジ)』と『振動矢(ヴァイブレイド・アロー)』、そしてこの回でしか使われていない『ヴァイブレイド・サイクロン』が使われるところですね。なんか、『頑張ったなぁ、城平先生』とか思ってしまいます。失礼ながら。

 もうひとつの見所がはぐれダムピールのレティと、主人公、ローズレッド・ストラウスの出会いでしょう。ちなみに、第一話からちゃんと読んでいたにも拘らず、レティのフルネームが『レティシア』であることをつい最近読み直すまで知らなかったことはここだけの秘密です。

 それにしてもこの物語、敵である『ブラックスワン』との戦いが切ないですねぇ。ちょっぴり鬱が入っているかもしれません。本当の敵は『仕方のないこと』である気がヒシヒシとしてきます。ええ、本当に。もっとも、それは他の城平作品にもいえることですが。というか、だから僕はこんなに城平先生の作品が好きなのでしょう。

 『マテリアルゴースト』もそうですが、本当の敵は『仕方のないこと』という事象そのものなんですよね。だから本当に切ない。しかもその切なさは、どこか、美しさすら含むんですよね。悲しいけれど綺麗で、残酷だけど美しい物語。どうやら僕はそういうものに強く惹かれるようです。

 そういえば蓮火、この回で言ってますね。『ダムピールが人間になる方法がある』と。これ、かなりあとへの伏線なのですが、第一話から既に仕込んであったんですね。

 ともあれ第一話はストラウスVSブラックスワン――小松原ユキの決着、彼女の死を持って幕となりました。

 実を言うとこのとき、『ヴァンパイア十字界』はそれほど魅力的には感じていなかったんですよね。ただのアクション物、という感があって。第一話の感想が短いのはそのためです。

 僕がこの作品にハマりだしたのは、ストラウスの過去が明らかになり始めたときからです。あの辺りからは城平先生の色がよくでるようになりましたからね。



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